活躍の場はどこかにあるのか?「高学歴中高年男性」が定年で苦しむ日本の実態【CFPが解説】

活躍の場はどこかにあるのか?「高学歴中高年男性」が定年で苦しむ日本の実態【CFPが解説】

活躍の場はどこかにあるのか?「高学歴中高年男性」が定年で苦しむ日本の実態【CFPが解説】

総務省「労働力調査」によれば、1976年には約3割であった45歳以上の就労者の比率が、2021年には約6割弱まで上昇しています。中高年世代は、総合職等で活躍をしている女性が少なく、管理職の多くは男性です。終身雇用は徐々に崩壊し、個人のより高い専門性が求められる一方、平均寿命は延びています。そのようななか、今後のキャリアについて悩みを抱える中高年男性は多いでしょう。ここでは、株式会社日本総合研究所の調査を踏まえ、働く高学歴中高年男性のジレンマについて取り上げます。※本記事は、「中高年男性の働き方の未来」(金融財政事情研究会・小島明子著)の内容を一部改編・追加の上、掲載しております。

「高学歴中高年男性」の意欲を活かせない職場環境

日本総合研究所の調査では、高学歴中高年男性に対して、就業継続に関する意思決定に影響を与える労働価値観について調査を行いました。

一般に、就業継続にあたっては、仕事に対する本人の考え方が影響すると考えられます。具体的には、「働くことによって得られる便益」と「働くことに伴う費用」を天秤にかけ、便益が費用を上回れば就業を行うという意思決定が下されるというものです。ただし、便益、費用ともその考え方は個人によって異なる主観的なものと考えられます。

「働くことによって得られる便益」は、働くことによって得られる給与所得や会社における安定的な地位の確保といった“外的報酬”と、仕事を通じて得られる自己成長や仕事そのものの面白さ・楽しさといった“内的報酬”に大別することができます。

「働くことに伴う費用」は、仕事をすることによって諦めなければならない家族・プライベートの時間といった時間に関するものに加え、仕事によって負わなければならない精神的なストレスや肉体的な疲労といったものが含まれます。これをまとめると、「働くことに伴う費用」は、“ハードワークに対する許容度合い”と言い換えることが可能です。

以上をまとめると、就業継続に関する意思決定には、「外的報酬に対する欲求」「内的報酬に対する欲求」「ハードワークに対する許容度合い」の3つの要素により構成される「労働価値観」が総合的に影響していると考えられます。

高学歴中高年男性の労働価値観

高学歴中高年男性の労働価値観に関しては、日本総合研究所が作成した9つの質問に対する回答結果から、大きく下記の4点が浮かび上がりました。

1.「外的報酬に対する欲求」に関して、出世・昇進といった役職に対する欲求は必ずしも強くないが、より高い報酬を得たいという欲求は強い傾向にあること

2.「内的報酬に対する欲求」は、外的報酬に対する欲求と比べて総じて強いこと

3.「内的報酬に対する欲求」は、就職活動時点からアンケート回答時点まで、その分布に大きな変化はみられないこと

4.就職活動時点では、ハードワークを許容できると考えている男性がそうでない男性よりもが多いが、アンケート回答時点においては、「ハードワークに対する許容度合い」が大きく低下し、ハードワークを許容できると考える男性がそうでない男性よりも少なくなる

これらをまとめると、高学歴中高年男性の自己成長ややりがいを求める意欲は強く、それは年齢を経ても変わらないことが指摘できます。ただし、年齢の上昇とともに体力が低下してしまうことなどによって、ハードワークは難しい状況が窺えます。そのため、中高年男性の意欲が低いという誤解を持たれるのは、ハードワークが難しいことに起因しているのだと考えます。

一方、同調査では、現在の職場環境に対する満足度についても調査を行っているのですが、「仕事を通じて自分の能力やスキルが活かせている」(「そう思う」、「強くそう思う」)高学歴中高年男性は約4割にとどまっています。前述したとおり、高学歴中高年男性の労働価値観において、自己成長や仕事へのやりがいを求める意欲が高いことを踏まえると、職場ではその意欲が十分活かされていない可能性があるといえます。

定年前後の再就職で発生するミスマッチ

職場で十分に活躍ができないと感じた中高年男性のなかには、再就職という選択を考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

同調査によれば、高学歴中高年男性が再就職してもいいと考える職種としては、「一般事務・サポート」が最も多くなっています。最も大学難易度区分の高いグループでは、全体に比べて、「調査・研究・コンサルティング」「経営企画」「教育」が多く、相対的には「財務・経理事務」「法務」「翻訳・通訳」といった専門的なスキルも多くなっています。「介護」「保育」の職種に再就職してもいいと考える男性は5%未満です。

しかし、「一般事務・サポート」の仕事は、非常に人気があるため、高齢になってから中途で採用されるのは容易ではありません。今後もニーズが必要とされる仕事としては、介護、保育といった分野が挙げられますが、高学歴中高年男性のそれらの分野への再就職に対する関心は低く、再就職市場の需要と中高年男性側の希望とのミスマッチが存在していることがわかります

一方で、中小企業・NPO等への再就職を希望する高学歴中高年男性は全体で約7割に上り、中小企業人手不足状況を踏まえれば、中小企業への再就職という道はあるといえます。ただし、中小企業では、少ない人数で、さまざまな仕事をこなさなければならないケースも多く、マルチタスクができる能力が求められます。

そのため、大企業で働くことに慣れている高学歴中高年男性においては、再就職後のミスマッチを減らすために、中小企業・NPO等で副業・兼業を行うなど、現場を知ることが必要だと考えます。

中高年男性の意欲を活かす複数の選択肢を

本記事では、働く高学歴中高年男性の意欲の高さや、またそれが十分に活かせていない職場環境、再就職でのミスマッチについて述べました。

しかし、いくつになっても高い意欲をもった中高年男性が活躍できれば、日本社会はもっと明るくなるのではないでしょうか。中高年男性の活躍を推進するためには、複数の選択肢が必要でしょう。

<参考> ※ (2022年2月8日改定)東京圏で働く高学歴中高年男性の意識と生活実態に関するアンケート調査結果(報告)

小島 明子

日本総合研究所創発戦略センター

スペシャリスト

(出典 news.nicovideo.jp)


(出典 www.youtube.com)
「定年後の活躍の場所が気になっていたので、この記事を見つけて良かったです。特にCFPの解説は具体的で分かりやすく、自分のスキルや経験をどのように活かせるのかを考える手助けになりました。この先も活躍できる道を見つけるために、さらに情報収集をしていきたいと思います。」

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