介護が必要な要支援・介護認定者数は、2021年度末で約690 万人 となった(第1号被保険者だけでは約680万人、注1)。公的介護保険制度がスタートした00年度の認定者数約256万人に比べると、約2.7倍だ。
一方で、厚生労働省の雇用動向調査によると、21年に個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約9.5万人に上った。いったん要介護状態になると、そこから抜け出せないことが多い。家族に要介護者が出れば、その家族は大きな影響を受けざるをえない。
介護は多くの人が直面する深刻な問題となっているが、40年頃には、要介護認定者数は約988万人に達すると推計されている(注2)。
老々介護や介護離職など「介護地獄」は、今後はますます深刻化する。介護問題への対応は社会全体の最重要課題だ。
● 介護認定、65歳以上では全体の2割だが 85歳以上では6割、介護を受けないのは稀なこと
介護保険制度のもとで、介護サービスの対象になっている65歳以上の第1号被保険者のなかで、何らかの介護認定を受けている人は全体の18.9%、つまり2割弱だ。(図表1)
決して低い比率ではないが、それでも、5人に4人は介護・支援が必要にならないような気がする。
しかし、実はそうではない。このことは、データで確かめられる。要支援・介護になる人の比率を年齢階級別に示すと、図表2のとおりだ。
18.9%という数字は、第1号被保険者の全ての年齢階級についての平均値だが、要支援・介護の必要性は年齢が上がると急上昇するからだ。
図表2に示されているように、要支援・介護の比率は、85歳以上になると58.8%にもなる。夫婦が同年齢と仮定すれば、夫婦のどちらも要支援・介護になる確率が34.6%もある。どちらかが要支援・介護になる確率は48.9%と、半分近くになる。どちらも要支援・介護にならない確率は、17.0%でしかない。
85歳以上になると、介護という問題から全く逃れられていられるのはむしろ稀な事態になってしまうのだ。何かの拍子に転んで骨折し、介護が必要な状況になるということなどがごく普通に起きてしまう。
このように、18.9%という数字は大いにミスリーディングだ。介護問題の深刻度は、年齢の差を考慮しない平均値では理解できないものなのだ。
しかも介護は高齢者だけの問題ではない。若くて自分自身は介護が必要なくても、両親が要介護状態になるという問題が起きる。
こう考えると、介護問題は全ての日本人にとって最重要の問題の一つということができる。