サントリー「VARON」 が30億円を突破 中高年男性になぜ選ばれるのか

サントリー「VARON」 が30億円を突破 中高年男性になぜ選ばれるのか

サントリー「VARON」 が30億円を突破 中高年男性になぜ選ばれるのか

 サントリーウエルネスのメンズスキンケア「VARON(ヴァロン)」が、中高年男性から支持を得ている。2022年3月に発売し、初年度の売り上げは10億円、翌23年は30億円を突破した。

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 スキンケア未経験のミドル・シニア男性をターゲットとし、1本で化粧水、美容液、クリームの役割を持つオールインワンセラム(ラージボトル120ミリリットル、通常価格8250円)を主力製品とする。

 毎日朝晩の洗顔後に使用すると、10日前後で「顔色が明るくなった」「肌がしっとりする」といった変化を感じる利用者が多く、その結果をキャッチコピーに盛り込んでいる。

 近年、メンズコスメティックス市場は右肩上がりに伸びている。しかし、40代以上の男性をターゲットにしたオールインワンのスキンケア製品は世の中にほぼないと、サントリーウエルネス スキンケア事業部の西山雅大氏は話す。

 どのように新市場を開拓していったのか。ヴァロン好調の背景を西山氏に聞いた。

100人のデプス調査で「悩み」を徹底調査

 ミドル・シニア層をターゲットに、「セサミン」などの健康食品や化粧品事業を長年展開してきたサントリーウエルネス。以前からミドル・シニア男性向けのスキンケア製品を作ろうという企画はあったが、実現していなかった。しかし、コロナ禍を機に風向きが変わったと西山氏。

 「一気にデジタル化が進み、Web会議やLINE電話などで自分の顔を見る機会が増えたこともあり、ミドル・シニア層男性の美容意識の変化がうかがえました。スキンケア製品の開発にあたり、まずは100人以上のデプス調査(1対1または長い時間を使って調査すること)を実施しました」

 同調査で多く聞かれたのは、「しょぼくれたくない」「(周囲から)シニア扱いされて落ち込んだ」といった声。単なる健康の悩みというより、外見の変化からくる疎外感や自信の喪失に悩む人が目立った。人生の最後まで、できるだけ若さを保ちたい、社会とのつながりや家族との良好な関係を失いたくない。そんな願いが見えたという。

 「ミドル・シニア層の男性には、スキンケア未経験者が多くいます。手入れしていてもドラッグストアで買った化粧水を夜だけ、あるいは乾燥する冬だけ塗るぐらい。毎日朝晩に使ってもらうなら、シンプルでなければ続かないだろうと。一方で市場に目を向けてみると、ミドル・シニア層の男性の悩みに寄り添ったオールインワン化粧品は、ほぼありませんでした」

●自社の研究を生かした1本3役のスキンケア

 サントリーウエルネスの調査によれば、女性の肌と比較して、一般的に男性の肌は皮脂量が多く、水分量が少ない。年齢を重ねてくると、ひげ剃りによるダメージも重なり肌が赤黒い印象になりやすい。

 そういった複雑な男性の肌をケアする成分として、同社の「ウイスキー樽材エキス」と「烏龍茶エキス」を配合している。

 「どちらも当社独自の成分で、ウイスキー樽材エキスは当社の製品に初めて採用しました。10年以上前に開発された成分で、男女どちらの肌にも良い効果が見込まれるのですが、サントリーウイスキー製品は男性ファンが多いため、メンズスキンケアにはぴったりだと考えました」

 また、1本3役のオールインワンを実現したのが、特許取得済の「WOWウォーター イン オイル イン ウォーター)高浸透型エマルジョン技術」だ。

 「化粧水、美容液、クリームの成分が時間差で浸透します。一般的なジェル状だと、ほぼ水分なので時間が経つと蒸発しますが、ヴァロンは油量が多いので、うるおいを閉じ込める作用があります。実際に、サラッとしているのにしっとり感が持続するという声が利用者から多く聞かれています」

 そして、もう一つこだわったのが「香り」だ。自社の顧客ヒアリングから、年齢を重ねるごとに広がる多様性に着目し、4種類の異なる香りを用意している。フローラルな香りの「オリジナル」、サントリーが開発した青いバラをイメージした「フレッシュ」、かすかに甘みのある「クラシック」、そして「無香料」だ。

●役員やクラブのママから「ギフト」を手渡し

 中高年男性向けのオールインワン化粧品という新市場の開拓にあたり、発売初期にサントリーウエルネスが注力したのが「体験の提供」だ。「普通に売っても売れないと思ったので、とにかく試してもらった」と西山氏。中でも、人から手渡ししたギフトボックスは効果が高かったそうだ。

 「ヴァロンの発売にあたり、全社員を集めて協力を仰ぎました。まずは全役員にギフトボックスを配布、自身で効果を体感した役員をアンバサダーに任命し、会食などでお会いした方への手土産としてギフトボックスを配ってもらいました」

 サントリーの営業先の一つである高級クラブでは、ママが顧客に渡す手土産としてギフトボックスを提案。さまざまな手法による手渡しでの配布は、向こうから“おかわり”がくるほど好評だった。これまでに総数で約4万箱を配布しており、体験を通して購入にいたる人が少なくないという。

 同時に使い切りのパウチのサンプリングゴルフ場、温泉施設、ホテルなどで配布。これまでに約100万セットを配ったそうだ。

 「日焼けをしたあと、汗をかいてシャワーを浴びるタイミングなどスキンケア製品を使うタイミングを捉えて、サンプリングしました」

 同社のホームユース調査(※)では、使用感満足度が高く出ている。10日間のサンプル使用に対し、91.1%が使用感に満足したと回答(全7段階のうち「とても満足」「満足」「やや満足」と回答した人の割合)した。数値は非公開だが、同社の製品のなかでもリピート率は極めて高いという。

●中高年男性に刺さった「情緒的な価値」

 西山氏いわく、テレビCMの放映やプロモーションの一貫で実施している利用者の写真撮影イベントも、購入の後押しに一役買っているようだ。

 テレビCMは、初年度と2年目でテーマを変えている。22年は「告白。」をテーマに、利用者自身が「鏡の前でにやけてしまう」「何かやっているの? と聞かれる」など肌の変化を語る内容だった。23年は「証言。」をテーマとして、家族や同僚が感じた利用者の変化を語るものとした。

 「これらは実際の利用者から聞かれた声です。同僚や家族から『印象が変わった』『肌にツヤが出た』と褒められて周囲との関係性が良くなったり、家庭の雰囲気が明るくなったり。CMを見た人たちに『スキンケアをすることで、そんな変化があるのか』という気付きを与え、購入につながることもあったようです」

 夫のポジティブな変化を妻が証言するCMを通じてか、妻が代理購入するような購買も見られている。妻に勧められて使ってみると、肌がしっとりして気持ちいいといった変化を実感してリピートにつながることもあるという。

 定期購入の利用者を招待した写真撮影会も、当事者に喜ばれているそうだ。プロのカメラマンが写真撮影をするイベントで、撮影データは参加者が自由に利用できる。22年秋に実施した際は全国5都市を回って、200組が参加した。

 「なかには奥様との撮影が結婚式以来、ご家族との撮影が数十年ぶりという方もいます。家族を巻き込んだポジティブな体験の提供は、ブランドとの関係性づくりにおいてプラスに作用しているだろうと。撮影した写真をSNSで投稿する方もいて、口コミでのブランドの広がりにも貢献しています」

 スキンケア未経験の男性にとって、「褒められる」「周囲との関係性が良くなる」といった情緒的な価値が継続のモチベーションになることが、一連のプロモーションを通じて見えている。サントリーウエルネス 生命科学研究所の調査では、40代以上のミドル・シニア男性のスキンケア習慣が、肌の変化のみならず幸福度の上昇に影響するという結果も出ている。

 ここまで好調に推移しているヴァロンだが、スキンケア未経験の男性を取り込むハードルは依然高い。スキンケアを化粧だとカン違いしている人や、女性がするものだからと抵抗感を持つ人もいるという。「利用者の口コミをどう広げていくかが、今後の大きなポイントだと考えている」と西山氏は話した。

 現状は積極的に販路を広げることはせず、オンライン販売に集中しながら口コミの拡大に注力する。ミドル・シニア男性へのアプローチの切り口として、「スキンケアと人生の幸福度の関係」に関する研究も続けていく意向だ。

(小林香織)

サントリーの「VARON」が人気、理由は?

(出典 news.nicovideo.jp)

「VARON」は私の父親にとって、まさに理想的なビールです。彼は中高年になってから、ビールの味や品質にこだわるようになりましたが、この一本は彼の心を掴んで離しません。それほどまでに素晴らしい味わいと豊かなコクがあるのです。サントリーは中高年男性の要望に応え、本当に素晴らしいビールを造ってくれました。

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