派閥ぐるみで裏金づくりという“組織犯罪”の一網打尽に期待して、ネット上でも「#検察がんばれ」と盛り上がっていただけに、立件見送り方針に対する失望は大きい。X(旧ツイッター)では「#検察仕事しろ」「#検察は巨悪を眠らせるな」のハッシュタグ投稿がトレンド入りする事態になっている。
全国から応援検事を集めて100人態勢で捜査しておきながら、安倍派幹部をひとりも挙げられないようでは検察の名折れもいいところ。もっとも、この決着はシナリオ通りと見る向きもある。
「当初から、安倍派潰しの国策捜査という見方があった。最大派閥が壊滅状態になれば、岸田政権を支える麻生派、茂木派、岸田派の主流3派が主導権を握り続けることができます。任意聴取が始まっても安倍派の幹部連中は自分たちが逃げ切ることしか頭になく、不安がる若手中堅のケアをまったくしなかったそうで、派内には不満が渦巻いている。幹部の5人衆は求心力を失い、これまでのような集団指導体制を維持することも難しくなっています。安倍派がガタガタになったことで、当初の目的は果たされたということでしょう」(自民党の閣僚経験者)
すっかり裏金イメージがついた安倍派の議員は今後の選挙が厳しいし、自民党の政治刷新本部のメンバーに安倍派の裏金議員が入って猛批判されていることを考えれば、閣僚起用なんて論外だろう。大臣を出せない派閥はいずれ解体に向かう。
それに、幹部クラスが立件されれば、安倍派の問題では済まなくなり、岸田政権そのものが批判にさらされる。岸田首相サイドにとっても検察にとっても、ここらが落としどころということか。
「幹部がひとりでも立件された方がマシだったかもしれません。事件にひと区切りつきますから。このままでは、いつまた地検から呼び出しがあるかと怯えながら過ごすことになりそうです」(安倍派関係者)
通常国会後に動きがあるか
26日から通常国会がスタートしても、検察が捜査を継続するのは自由だ。国会期間中は国会議員の不逮捕特権があるとはいえ、在宅起訴や任意聴取は可能。1989年のリクルート事件では、国会開会中の5月に藤波孝生元官房長官が在宅起訴された例もある。今後の捜査で証拠が固まれば、通常国会後に動きがあってもおかしくない。
裏金事件で検察に最も食い込んでいた朝日新聞社会部がまだ「立件見送り」と書いていないことも気になる。
「国会召集日までまだ10日あるので、世論の高まり次第では安倍派幹部の立件もあるかもしれない。今回は立件を免れても検察審査会に持ち込まれるのは確実で、裏金事件はまだまだくすぶり続けます。安倍派の議員や秘書が大規模に任意聴取を受けたことが端緒になって、別の事件に発展する可能性もある。いつ終わるかも分からないグレーな状態が続くことは政治的には最悪で、安倍派はしばらく身動きが取れません」(政治評論家・本澤二郎氏)
そうやって安倍派を生殺しにして党内を掌握することが岸田首相の目的だとしたら、あまりにやり口がエゲツない。