全日本軟式野球連盟に登録する小学生の学童野球のチーム数は、10年ほど前には1万3000を超えていた。にもかかわらず、近年はそのチーム数は下降の一途を辿っているのだ。
1162の合同チーム
学童野球に詳しい球界関係者によれば、
「毎年数百チームずつ減少しており、2022年には1万チームを割りました。日本中学校体育連盟の統計を見ると、09年に全国で30万人以上いた中学校の野球部員が、昨年は13万人台にまで激減し、7808校の中で合同チームが1162となっています。合同チームを組んでいる学校の数ではなく、合同してできたのが1162チーム。高校野球でも単独でチームを編成できず、大会に出るため連合チームを組む学校が年々増えています」
高校生ぐらいまでは学年ごとの体格差が大きく、本来はできるだけ発育の段階が同じ程度の子どもたちが切磋琢磨することが望ましい。よほど早熟な子でない限り2学年上の先輩たちと一緒にプレーするのは無理がある。だが、1年生まで駆り出さないと人数がそろわないという状態では、そんなことも言っていられない。合同チームを組んでいる学校以外にも、そのような人数ぎりぎりの野球部が少なくないであろうということを考えれば、チームを維持していくこと自体に困難な状況が広がってきていると言わざるを得ない。背景には少子化という要因もあるとはいえ、それだけでは説明が付かないほど急激に裾野が縮んでおり、野球への関心が低下している現状が浮き彫りとなっている。
野球は親しむまでのハードルが高いスポーツだ。複雑なルールを理解するのには時間がかかるし、実際にやるのも難しい。サッカーであれば、レベルはともかく、子どもを2チームに分けてボールを蹴らせればゲームになる。かたや、野球の試合を成立させるには、「投げる」「捕る」という動作にそれなりの水準で習熟していなければならない。
そこで、野球経験のない小学生に大谷グローブについて訊くと、
「(学校に届いているかも)知らない。野球をやっている子はキャッチボールするのかもしれないけど、(自分は)やらないし」
そう、すげない答えが返ってきた。
おじさんたちの頭にある小学生像
既に野球チームに入っていたり、家庭で親から手ほどきを受けたりしているならともかく、野球との接点がない子どもにとっては、キャッチボールも決して手軽にできる遊びではない。ニュース映像の中で届いたグローブを使ってキャッチボールをしていたのは、ほとんどが既に野球をやっている子どもたちではないだろうか。道具だけ手元に届いたとしても、教えてくれる人がいなければ最初の一歩は踏み出せない。
テレビ局も新聞社も、編集・編成の過程で大きな権限を持っているのは中高年の男性が多い。少々意地の悪い見方だが、「大谷選手からグローブが届き子どもたちが大喜びしている」というニュースの仕立て方は、おじさんたちの頭にある小学生像に引きずられている嫌いがあるのではないか。確かに喜んでいる子どももいるだろう。ただし、無関心な子はそれ以上に多いだろう。
ジャイアンやのび太が空き地で野球をしている「ドラえもん」の世界とは裏腹に、現代の日本では友達と野球をして遊んでいる子はとんと見かけなくなった。