彼女を取材したことで、在日コリアンの複雑な状況を少しは理解することができた。16年前の彼女のように、現在の在日コリアンのなかには、すでに世界地図から消えた「朝鮮」を大切に考える人たちがいる。国籍は様々だが、朝鮮学校に通う生徒からしてそうだ。南北に分かれる前の「朝鮮」の言葉と文化を守るため、彼ら彼女らは80年近くにわたり大変な思いをしながら闘っている。
朝鮮学校の始まりからしてそうだった。1945年8月の解放(日本の敗戦)後に日本に残ることになった60万人の在日コリアンは、子どもたちが朝鮮人として生きていけるよう、教育機関を作った。しかし1948年、日本政府と連合軍司令部(GHQ)が日本全国に500校以上設立された朝鮮学校の閉鎖を命令し、在日コリアンの強い抵抗にもかかわらず、大多数が消えることになった。1957年に北朝鮮による教育援助費と奨学金の支援が始まり、朝鮮学校はふたたび立ち上がることができた。このときから北朝鮮の影響力が強くなった。
12月15日午後、東京都千代田区にある文部科学省の前では、朝鮮学校無償化排除に反対する500回目の「金曜行動」が行われた。日本政府は2010年4月に高校の授業料を国家が負担する高校無償化政策を開始したが、朝鮮学校だけは対象からはずした。総連を通じて北朝鮮と関係を結んでいるという理由からだった。政府レベルで朝鮮学校を差別しても構わないという社会的な烙印を押したわけだ。朝鮮学校の生徒と朝鮮大学校の学生、保護者、日本市民が毎週金曜日に抗議集会を行う「金曜行動」は、すでに10年目となる。この日会った子どもたちの全員が「怒っている」と言った。より幸せでなければならない子どもたちの胸中には、差別・排除・怒りの感情があふれていた。北朝鮮をどう考えるのかによって朝鮮学校に対するアプローチは違うかもしれないが、それは差別の理由にはならない。国連もすでに日本政府に対して「差別を是正せよ」と何度も勧告している。
「異なる人たちが違いを認めて共に生きる社会が実現されるのであれば、日本は在日朝鮮人だけでなく日本人にとっても、暮らしやすい社会になるでしょう。この呼び掛けは、韓国社会をよりよいところにしようと考える韓国の読者たちにもそのまま有効でしょう」
先月18日に急死した「在日朝鮮人2世」である東京経済大学の徐京植(ソ・ギョンシク)名誉教授が自身の著書『歴史の証人、在日朝鮮人』(日本語版『在日朝鮮人ってどんな人?』)で訴えた内容だ。著書の出版から11年が経過したが、韓国と日本ともにあまり変わっていないようだ。