日本青年会議所の前会頭の「甘ったれた考え方」を根本から変えた…被災地でもらった「痛烈なひとこと」

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日本青年会議所の前会頭の「甘ったれた考え方」を根本から変えた…被災地でもらった「痛烈なひとこと」

2025年問題」をご存じだろうか。この年、戦後の経済成長を引っ張ってきた団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となる。むろん社長たちも例外ではない。そこで問題になるのが「後継ぎがいない」ということだ。今現在、「後継者難による廃業」を選ぶ中小企業は少なくない。2025年を境にその数が激増するのではと心配されているのである。その状況に企業は、経営者は、どう対処すべきか。現代の事業承継に関する情報を1冊に集めたPRESIDENT MOOK『令和ニッポン「事業承継」大全』(プレジデント社刊)から、現代の「アトツギたちの肖像」をお届けする──。(第3回/全3回)

■「おまえは社長になるんだ」と言われ続けた幼い日

●ジェイリース/中島土社長

私は幼い頃から祖父と父に、「いいか、土。お前は社長になるんだ」と言われ続けて育ちました。祖父が土木業を経営していたことから、その職場にもよく連れて行ってもらい、祖父の膝の上に座って、みなさんが働くのを見ていたものです。

みんなの先頭に立って働く祖父と父の姿を見て、「かっこいいな」「自分も祖父や父のようなリーダーになりたい」と思い、その後も違う道に行きたいと思ったことはありません。

2004年、私が大学生の時、父が新たな会社を創業しました。それは保証人がいないと部屋を借りることができないという、日本の社会的な課題を解決するために、青年会議所(JC)のメンバー約50人が中心となってつくった会社で、発起人の1人は父でした。それが現在のジェイリースです。

私は「おまえも将来は起業して社長になれ」と父から言われており、自分でもそう思っていました。しかし、気がつけば父の後を継いで同じ会社に入社し、創業20年となる23年6月に後継社長に就任。この大きな動機の一つは、心のどこかで背中を追い続けた父に喜んでもらいたかったからではないかと、自己分析しています。

■JCで人のために汗を流す無償奉仕の大切さを知る

22年、私は日本青年会議所(日本JC)の会頭を務めさせていただくことになるのですが、JCに参加したのも、父に勧められてのことでした。JCは新しい社会をリードする人材の育成を目的としてアメリカで生まれ、日本でも戦後間もない1949年から、ボランティアや行政改革等、社会的課題の解決に取り組んでいます。会員は20歳から40歳まで、創業者や事業承継者が多く、地域との絆が強いことが特徴です。

父に言われて入会したものの、私は当初、JCの活動にあまり乗り気ではありませんでした。なぜ世のため人のために、自分にとって最も大切なものである時間を使うのか、理解できなかったからです。「何か仕事につながればいいか」くらいの気持ちでした。

ところが、そんな考え方を変えた出来事がありました。12年のある夜、大分県日田市で大きな水害があったというニュースを知った私は、どこかそれをひとごとに感じていました。

すると電話が鳴ったのです。当時のJCの理事長からで、「日田が大変なことになっている。明日は復興活動に行くぞ」と言い渡されました。

私はそれまで一度もボランティアの経験がなく、災害復旧の手伝いもしたことはありません。正直に言うと嫌でたまらなかったのですが、理事長に逆らうこともできず、翌朝、迎えの車に乗って現地に向かいました。

一面泥に覆われた被災地で、すでに50人ぐらいの若い男女が懸命に復旧作業をしています。作業の途中になって、それがJCのメンバーだと分かりました。泥に漬かった家の中を掃除し、がれきを片付けたり、スコップで泥をのけたりしています。私もその人たちの熱意に巻き込まれるようにして、一緒に復旧作業を手伝いました。

一通り作業を終えて、メンバーたちとねぎらい合っていた時、一組の老夫婦が私たちの方にやってきました。私たちが片付けをしていた家にお住まいの方たちでした。

目深に帽子をかぶったおばあさんは、大粒の涙を流しながら「ありがとう」と言いました。おじいさんは、「君たちのような青年がいればこれからの日本は大丈夫だ」と言ってくれました。

私はものすごく感動し、来ることをためらっていた自分を恥じました。誰かのために一生懸命動くことが、こんなにも充実した体験になるんだと、私はその日、初めて知ったのです。

その後も、私は会社では叱られにくい立場にありましたが、JCではたくさん叱られました。恵まれた立場の2世、3世の後継者ほど、私のような経験をされると、より良いと思います。社長であっても新人扱いされ、世のため人のために奉仕する。それこそが、社長としての器を大きくしてくれます。そしてその器以上に、会社は強く大きくならないと信じています。

■会社は社員成長のプラットフォーム

事業でも奉仕活動でも共通するのは、「自分が何をやりたいかより先に、まず相手の願望をよく理解する」ということです。JCのような無償奉仕でも、金銭関係を伴うビジネスでも、相手の願望が何かを知ることからスタートしないと、成功できません。

すべては「あなたのためにどうしたらいいか」から始まるのです。「私がどうしたいか」ではありません。

JCでの活動を通じて、社長として経営にかける思いも変わりました。社長に就任した時、私は「社員一人一人の成長を決してあきらめない経営者になろう」と決意しました。「会社というプラットフォームで、人を成長させていこう」と考えたのです。

私は会社におけるリーダーとしての自分を、「会社の理念、会社の目的、会社のビジョンしもべ」と位置づけ、社長業を通じて、社員一人一人を幸せにしたいと願っています。

社長としての私が存在しているのは、ジェイリースの理念の中核である「全社員と私たちに関わる全ての人の幸せを追求する」ためであり、ジェイリースビジョンである「誰もが自分の人生をまっとうできる社会」を実現するためなのです。

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中島 土(なかしま・つち)
ジェイリース社長
1982年大分県大分市生まれ。2004年中央大学経済学部卒業。23年にジェイリース株式会社代表取締役社長に就任。

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(出典 news.nicovideo.jp)

「前会頭の甘ったれた考え方を根本から変えたとは、すばらしい成長を遂げたと思います。被災地での痛烈なひとことに触れることで、新たな視点を得ることができ、日本青年会議所の将来に希望を持つことができました。」

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