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北朝鮮の食糧難深刻 国連機関「秋に過酷な状況も」 韓国は支援模索
北朝鮮南西部の黄海南道で農地を視察する金徳訓首相(中央)=朝鮮中央通信・朝鮮通信
北朝鮮が最近になって食糧不足を公然と認めたことを契機に、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が人道支援名目での南北交流再開を模索している。北朝鮮は昨年の台風や水害の影響で食糧危機に陥っているとされ、穀物の収穫期を迎える秋までが正念場。ただ、北朝鮮はこれまで支援を拒絶し続けており、韓国は公式提案のタイミングを慎重に探っている。
「昨年の台風被害で穀物生産計画を達成できず、人民の食糧事情が緊張している」。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は15~18日に開かれた党中央委員会総会の初日、食糧難を率直に認めて、対策を検討するよう指示した。農業が最重要かつ最優先課題であるとして、災害に備えるために気象観測部門との緊密な連携を図るとともに、他部門にも全面的な支援を求めた。
国連食糧農業機関(FAO)は6月、北朝鮮で10月までに約86万トンの食糧が不足するとの推計を発表した。これは2カ月分以上の消費量に当たり、「不足分が賄えなかった場合、8~10月に過酷な状況に陥る可能性がある」と警告した。
韓国の政府系シンクタンク「韓国開発研究院」も70万~100万トンの食糧不足を予測。3月には中国からの肥料の輸入が再開されたが、その量は大幅に不足しており、今年の収穫に悪影響を与える可能性が大きいと指摘した。
こうした報告を受け、韓国の李仁栄(イ・インヨン)統一相は6月18日、MBNテレビのインタビューで、「心配している。北朝鮮の意思が明確になれば、我々がためらう理由はない」と食糧支援への意欲を示した。これに先立つ5月の米韓首脳会談でバイデン米大統領は南北対話再開への支援を約束し、米韓が人道支援の準備を進めていくことでも一致した。文政権は残り任期が1年を切っており、人道支援をテコに南北交流再開を急ぎたい考えだ。
韓国政府は既に、北朝鮮への支援用にコメ15万トン、肥料20万トン分の今年度予算を確保した。ただ、19年6月に国連世界食糧計画(WFP)を通じたコメ5万トンの支援を決定したものの、北朝鮮から「米韓合同軍事演習の実施」を理由に受け取りを拒否された苦い経験もある。このため、支援の申し出が再び空回りすることがないように北朝鮮の意向をまず確認し、支援要請を受けて韓国が動く形式を整える方針とみられる。【ソウル渋江千春】
毎日新聞 2021/6/27 14:00(最終更新 6/27 14:17) 968文字
https://mainichi.jp/articles/20210627/k00/00m/030/078000c