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ストレスや認知症の軽減にも効果を実証…単なる「代わり」じゃない!癒しと安心の最新ペットロボット
一人暮らしの高齢者や、ぺット不可のマンション居住者に人気のペットロボット。ぺットロスで辛い経験はしたけれど、「またペットを飼ってみたい」という人にも需要があります。そんなペットロボットに認知症軽減などセラピー効果も確認されていることをご存じでしょうか。最新のペットロボットが、我々の未来にどんな影響を与えるのか、考察していきます。
※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
洗練された最新のペットロボットたち
さまざまな企業が開発を進め、進化し続けているペットロボット。たとえば「LOVOT(ラボット)」は視覚・音声・照度・温度を感知する50以上のセンサーを搭載したAI型ペットロボットです。リアルタイム意思決定エンジンによって会話の反応を0.2秒にまで短縮させた性能は、タイムラグを感じさせません。
10億とおり以上の瞳や声帯を持っており、カスタマイズが豊富な点も魅力のLOVOT。よく面倒を見てくれる人に懐き、飼い主とのやり取りで性格も変化していきます。
とりあえずペットロボットを体験してみたい人は、オンラインコンテンツの「PLAY! LOVOT」を利用するのがおすすめ。スマホをかざすと、AR機能によってLOVOTが自宅にいるような感覚が味わえます。
ペットロボットといえば「aibo(アイボ)」を思い浮かべる人も多いですよね。まるで本物の犬のようなビジュアルと仕草が特徴的なaibo。こちらもLOVOTと同様に飼い方次第で性格が変わっていきます。
aiboにおもちゃのボールや骨を与えると、いきなり遊ぶのではなく最初は匂いを嗅ぐといったリアルなリアクションをしてくれます。aiboは自らがやりたいことをやるという基本設定のため、予測外の動きをすることも。aiboにあまり動いてほしくないときは、「おすましさん」と声掛けして肉球を押しながら撫でてあげるとその場にとどまってくれます。
さらにセコムと連携することで、自宅の防犯対策でも活躍してくれます。まさに「番犬」のような役割を果たしてくれるペットロボットです。
「弱いロボット」が人間を癒やす!?
丸いコロンとしたフォルムがかわいい「NICOBO(ニコボ)」は、パナソニックが開発したペットロボット。「弱いロボット」「永遠の2歳児」というコンセプトのもと開発されました。
NICOBOは「人間に守られて生きるペット」という側面が強調されています。「弱いロボットは人間の強みや優しさを引き出す」とNICOBOの開発者が語っているように、守ってあげたい、かわいがってあげたいという気持ちを強く感じさせてくれるペットロボットです。
一緒に暮らしていくと人の表情を見極めたり、口癖をマネしたりするようになります。飼い主は母性本能をくすぐられるような感覚になるのかもしれません。
LOVOTとNICOBOは触り心地にもこだわった作りとなっており、ロボット特有の無機質な印象を感じさせません。クッションやニット生地をボディに使用しているため、抱っこしたときも柔らかさを感じられる作り。LOVOTは内部で発した熱をボディ表面に放出することで、まるで生きているかのような体温を感じさせてくれます。
「子供の情操教育にペットを飼ってみたい」という家庭にも適しているのではないでしょうか。
ペットロボットと触れ合うことでストレスホルモンが低減
LOVOTの開発会社と資生堂が共同で実証実験をおこなった結果も大変興味深いものです。人間がLOVOTと15分間触れ合うことで、ストレスホルモンの1つである「コルチゾール」の低減が確認されました。
また「幸せホルモン」の異名を持つ「オキシトシンホルモン」の濃度が高くなることも証明されています。オキシトシンホルモンは妊娠・出産のときにも増加するホルモンで、「愛情ホルモン」と呼ばれることもあります。
しかし本物の犬や猫と同じような癒やし効果があったとしてもやはりロボット。「本物の犬・猫のほうがいい」という人もいるでしょう。しかしペットはかわいいだけではなく、毎日の世話や病気の心配に常にさらされています。
子供が「ペットが飼いたい」とお願いしたことがきっかけで飼い始める家庭も多いと思いますが、最近の犬や猫は20年以上生きることも珍しくありません。子供が成人して家を出てから世話に困っている親世代も多く見受けられます。
ペットを飼ってみたい、という家庭はまずペットロボットで、ペットがいる暮らしを体験してみるのはいかがでしょうか。
数年前、コロナ禍で自粛期間が続いたことによりペット需要が伸びました。これに伴い、自粛期間後に一部の身勝手な人間たちが飼育放棄をするなども発生し、大きな話題となりました。年間1万4,000匹以上の犬猫が殺処分されている問題や、ブリーダーの不適切飼育などもペットロボットが普及することで減少していくのではないでしょうか。
ペットの鳴き声によって起こるご近所トラブルの回避など、ペットロボットは社会問題解決にも適応できる可能性を秘めています。
「要介護5」から「要介護2」に軽減させたペットロボットの可能性
ペットロボットは一人暮らしの高齢者の見守りもしてくれます。ミクシィが開発した「Romi(ロミィ)」は手のひらサイズのかわいいペットロボット。会話型AIロボットで、Romiのほうから話しかけてくれ、毎回話す内容も異なります。天気予報や目覚まし機能、占いなどの機能も充実。
また、顔や声の登録が3人まで可能で、名前で呼びかけてくれることも。専用アプリのインストールで飼い主の行動を記録する機能も使えるため、離れて暮らす高齢の親御さんの見守りにも最適ではないでしょうか。英会話や脳トレ機能を利用すれば、認知症予防にも一役買ってくれるかもしれません。
さらにペットロボットは高齢者の認知症軽減にも効果が認められています。アザラシ型ロボットの「パロ」は、国内外で高齢者治療に多くの実績を残しているメンタルコミット型ペットロボットです。
デンマークでは2009年ごろからパロのセラピー効果を評価。国家プロジェクトとして高齢者ケアに積極的に採用しています。
アメリカ・テキサス州では61名を対象に「パロあり」と「パロなし」の2グループにわけ、実験を実施。20分間の触れ合いを週3回、12週間続けたところ、不安やうつ・痛み・ストレスなどの改善が認められました。不安に対する抗精神薬投与が低減するなどの効果もあったといいます。
ペットロボットは薬の投薬によって付随する副作用の心配もありません。高齢者にとって極めて健全なケア方法といえるのではないでしょうか。
日本でも介護福祉施設や高齢者病棟など、パロの導入を開始している施設があります。2013年から在宅介護でパロを導入している富山県では、認知症介護者の問題行動が低減化したことが報告されました。
認知症と統合失調症で「要介護5」だった高齢者が、パロと触れ合うことによって「要介護2」まで改善したという好例もあります。特に在宅介護の場合は介護する家族の負担も問題となっています。介護度が下がることによって、介護する家族の精神的・身体的ゆとりにもつながるでしょう。
ソニーの有料老人ホームではaiboが導入され、施設の入所者だけでなく介護スタッフの心の癒やしにもなっているようです。
犬や猫を老人施設に入れるには、噛みつきや引っかきなどの問題があったり、感染症のリスクがあったりとなかなか難しかったようですが、ペットロボットならこれらの問題もクリアできます。
ペットロボットは「癒やし」や「かわいさ」といった役割だけではなく、高齢化社会やストレス社会に向けた大きな可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。我々の未来の心の安寧にペットロボットは欠かせない存在になるかもしれません。
吉田康介
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