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【毎日新聞】米軍が帯同して朝鮮戦争に従軍した日本人 ソ連や北朝鮮の抗議に日本人いないと偽った米国
2021年3月下旬、私は神奈川県内のある集合住宅の玄関前に立っていた。朝鮮戦争の戦地へと渡航した民間日本人の取材を始めて1年半が過ぎていた。インターホン越しに来訪を告げると薄く扉が開いた。「わざわざ九州から来たのか」。つえをついた高齢男性が目を細めた。朝鮮戦争の前線に「参戦」した生存者との初の対面だった。「まあ入ってください」。男性が匿名を希望したため、名前を伏せて「熊倉さん」と呼ぶことにしたい。
71年前、熊倉さんは大分県別府市の在日米軍基地「キャンプ・チッカマウガ」で働く炊事係だった。朝鮮戦争が勃発してすぐ、基地で働く他の日本人従業員たちと朝鮮半島へ渡った。炊事兵としての帯同だったが、カービン銃を持たされ、戦闘にも巻き込まれた。同じ部隊から一人の日本人が行方不明になり、今も消息は不明のままだ。その人は同市出身の吉原嶺史さん(当時21歳)。私が熊倉さんの所在を追ったのは、ともに大分出身の2人が交錯する足跡を知ったからだ。その理由は後述するが、ここに至るまでの経緯を振り返ろう。
■米軍作成の極秘文書
20年1月、私は米国立公文書館から「韓国における日本人の無許可輸送と使用」と題した米軍作成の極秘文書を入手した。文書は計843ページ。朝鮮戦争で米軍が帯同した在日米軍基地の日本人従業員ら60人のうち少年4人を含めた18人が米軍の尋問に戦闘へ参加したことを証言していた。敗戦間もない占領下の日本から対岸の戦地に民間人が渡り、戦闘による行方不明者や死亡者もいたという驚くべき記録だった。
(略 会員記事)
毎日新聞 2021年6月25日 6時01分
https://mainichi.jp/articles/20210624/k00/00m/040/241000c