1月2日夕方6時過ぎ、松山から羽田へ向かう航空機内にアナウンスが響く。
妻の実家に帰省し同便に搭乗していた本誌記者は、軽微なトラブルでスグに羽田へ向かうだろうと軽く考えていた。しかし……。
年明け早々の1月2日、前代未聞の大事故が起きた。午後5時50分ごろ、着陸直後のJALの旅客機が海上保安庁の航空機と衝突。日航の乗客乗員379人は脱出し命に別状はないようだが、海保機に乗った職員6人のうち5人が亡くなったという。
冒頭の機内に戻ろう。上空では基本的に、スマートフォンやパソコンなどの電子機器類は使えない。ただ状況が状況。ただならぬ雰囲気にスマホを起動させる人が出始めた。記者も隣の席にいた男性に話しかける。
「羽田はどんな状態か何かニュース入っていますか?」
「や、ヤバいですよ、飛行機が燃えている。この動画見てください」
見せてもらった映像には、巨大な炎をあげる旅客機の機体の様子が。た、だ事ではない。30分ほどすると、乗っていた飛行機は松山空港に戻った。これからどうなるのだろう。
「当便は欠航となります」
女性スタッフの機内アナウンスが響く。
「皆様、羽田空港の滑走路火災により当便は欠航となります。明日(3日)、明後日(4日)の便もすべて満席です。ご対応できず大変申し訳ございません。当便を降りて地上係員の指示をお聞きください。お帰りの交通費をご負担しますので、お降りの際にスタッフから請求用紙をお受けとりください」
受けとった「交通費請求のご案内」書。負担は1万5000円までとある。「えっ、それだけ?」。これでは、とても愛媛から東京までの旅費にならない。地上係員に尋ねると。
「これ以上の負担はご勘弁ください。交通機関から領収書を受けとっていただき、2週間以内に弊社へ郵送いただけますでしょうか。ご指定の金融機関へ振り込みます。
はい? 明日以降の振替輸送ですか。大変申し訳ございませんが、3日の便はすべて満席です。帰りの便は6日以降ご自分でご手配いただけますでしょうか。電車やバスについては、弊社には情報がございません。ご迷惑をおかけして心からお詫び申しあげます」
記者は4日から仕事なのに、ラチがあかない。時刻は夜7時半を回っている。愛媛の実家に戻ろうにも、義母たちは記者が帰京すると見込んで温泉旅行に出かけ留守。仕方ない。空港近くのホテルに泊まろう……。だが甘かった。同じような状況に置かれた人たちは多数。ホテルはどこも満室だった。