■女性ホルモンや親のフォローが影響?気づくのが難しい「女性の発達障害」
厚労省の調査(※1)によると、発達障害と診断された人の数を男女別でみると、男性の割合が68.8%、女性の割合が29.9%という結果で、男女比にすると、1:2.3人と性別によって大きく違いが出ている。
一見すると、発達障害は男性に多いとよめるが、実は女性も診断数以上に存在していると考えられている。
早稲田メンタルクリニック院長で精神科医の益田裕介さんは、女性の診断数が少ない理由には、女性の発達障害の特性は目立ちにくく、医師も、親も、周囲も、気づくのが困難という背景があるという。そして、そのことによる女性への影響は大きいと解説する。
ーーなぜ女性は発達障害だと気づかれにくいのでしょうか?
益田裕介 早稲田メンタルクリニック院長
「男性は、男性ホルモンの影響を受けるので、より攻撃的になったり、多動が激しくなるので、特性が目立つんです。一方で、女性の場合は女性ホルモンの影響を受けるので、大人しくなっていきます。
女性の発達障害の特性に、忘れものや遅刻が多いといった傾向があるのですが、他の要因が関係して起きていることもあります。また、これらの行動を親が自分の責任だと思ってしまい、手助けをしてしまうんですね。そのために見つかりにくいということもあります」
ーー子どものためにフォローすることは親としては当然な気もしますが…。
「ほどよく、挫折とか、失敗を体験させることも大事だったりします。大学生まで、社会人になるまでと、親がフォローできても、その後は自分で何とかなるだろうとなってしまう。結果、親が助けて何とか成長して、あとは自己責任になってしまうんです」
ーーそうなると、どうなるんでしょうか?
「大人になってから発達障害が診断される場合というのは、大人の社会に適応できないからわかるということがあるんですね。みなさん、本当に困っています」
■性被害というリスク・・・性に関する暗黙のルールがわからない
発達障害の特性の一つに「コミュニケーションが苦手」という点がある。このことは、診断されず、支援がないまま成長してしまうと、社会生活の中でいくつもの課題を生み出すのだという。
「いろんな課題があるのですが、一つには、性被害に遭いやすい点が挙げられます。
社会には暗黙のルールがたくさんあるっていうことを、丁寧に説明してあげなければならないのですが、性に関する暗黙のルールや機微は親は伝えにくいし、友達から教わることもあまりないので、性被害に遭いやすいんですね」
ーー性に関する暗黙のルールって、どういうことでしょうか?
例えば夜道や、男性ばかりの飲み会って、暗黙的に“危険な場所だな”と認識できますよね。しかし発達障害の方は、仲の良い人たちだから行ってみようかなとなるんです。“危ない” “怖い”という感覚がないことがあります。
さらに例えば、2人でゲームしない?と誘われて男性の家に行くことも、ある意味、性的関係になる可能性もあるのに、社会的文脈や暗黙知が分かりにくいんです」
ーーいわゆる一般的な常識とは違う常識で動いてしまうんですね…。
「発達障害の方は周囲から『何でできないの?』『何で人の気持ちがわからないの』と否定され、怒られてきたケースが多いです。
このことは、最近、社会問題になっている「悪質ホスト問題」にもつながっているのではないかと思っています。否定され、怒られてきた人が、ホストに『キレイだね』『ステキだね』なんて褒められると、もう脳がとろけるくらい嬉しくなってしまうことがあるんですね。
世の中ではホストにハマる女性への自己責任論もあるようですが、精神科医目線だと、そうではないケースがあることもわかるので、この問題をどのように解決すべきかが今後の課題だと考えています」
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