前編【【内部資料入手】NHKが来年度から「テキストニュース」の縮小を検討 「NHK NEWS WEB」は「謎の新サイト」へ移行か】からのつづき
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最も多いのは記者
職場はテレビ局。給料も良く、都内の社宅に月3万円程度で住めるなど福利厚生も充実。受信料収入による安定した経営で倒産の不安なし…。これまでNHKの職員は「勝ち組」として羨ましがられてきた。だが、ここ数年で大きな変化が起きている。全世代にわたって退職者が急増しているのだ。
「12月だけでも10人くらいの記者がバタバタと退職したと聞いています。ディレクター、技術職など幅広い職種にわたって退職者は増えています」(40代職員)
デイリー新潮が入手した内部資料は、22年8月から23年7月までの退職者数を職種別や処遇区分別にまとめたものだ。1年間で退職した職員の総数は155人。最も多く辞めているのが「取材」(記者)で33人。「管理」(総務系職員)30人、「専任」(解説委員など業務の専門家)28名「PD」(ディレクター)21人、「技術」(エンジニアなど)14人、「アナウンサー」4人、「デジタル」(2年前に新設されたネット業務の専門職)1人と続く。「映像取材」(カメラマン)は0人だった。
管理職の退職者も急増
(中略)
「この会社、大丈夫か」と不安になる
「とことんやっていられない気持ちにさせてくれる会社なんです」
こう心情を打ち明けるのは、40代幹部職員である。
「3年ごとに上層部がすげ変わって、それまで“右行け”と言われていたのに“やっぱ左”と言い出す。例えば『デジタル職』は2年前、前田晃伸・前会長時代に鶴の一言で新設された職種ですが、近く廃止される見通しです。“これからはネット展開だ”と呼びかけられ、夢を持って記者やディレクターからジョブチェンジした彼らの気持ちにもなってください」
ちなみにデジタル職の退職者は1名となっているが、
「不満が渦巻いており退職予備軍が大勢控えていると聞いています」(同)
前田会長時代に導入し、稲葉体制に変わって早くも撤回された人事制度改革も大きな爪痕を残している。
「あれは前田さんが若手職員を積極的に登用するために行われた制度改革だったのですが、外部の人事コンサルに丸投げしたため、評価基準がよくわからないと局内は大混乱に陥った。結局、稲葉さんに変わって元の制度に戻すことになったんですが、登用された職員からすれば“ごめん、会長が変わったからまた元に戻させて”って言われても納得できないでしょう。こんなことばかり起きたら、誰だってこの会社、大丈夫かって不安になる」(同)
NHK予算は27年度までに1000億円削減することが決まっている。年々給料も下がり、このままNHKに居続けていても明るい未来を描けられないというのだ。30代の記者はこう打ち明ける。
「ウチは給料がいいというイメージがあるかもしれませんが、それは昔のこと。いま地方支局に勤務する若手なんて、記者じゃなければ手取りは18万円とかですよ。ウチは基本給が安くて残業代で稼ぐシステムで回ってきたのですが、働き方改革とかもあって残業ができなくなり給料が激減しているんです」
その煽りで世代間格差が広がり、職場はギスギスしていると続ける。
優秀な人ほど辞めていく
「上司には“俺の時代は30手前で一本超えた。お前らも給料もらっているんだからちゃんと働け”と発破をかけてくるような人もいるんですが、“いや、アンタと違ってそんなにもらっていないから”という気持ちになります。でも、20代の後輩たちの方が悲惨。彼らからは私も同じように見られているのです。職場での仲間意識は明らかに減退しています」(同)
それでも頑張って勤務を続け、管理職に出世すれば今でも年収は1000万円を超える。なぜそんな好待遇をなぜ捨てる人までも増えているのか。
「優秀な人材ほど辞めていく傾向にあります。ウチは管理職になったばかりくらいの頃が、仕事量が多くて一番キツいんです。退職者が多くて人手が足りない、部下に残業させられないとなれば、管理職が率先して働かなければならないでしょう。そんな時にあっちこっち時の権力者に擦り寄って動く小判鮫みたいな幹部たちを見ていると、“もういいや”という気持ちになるんです。転職先で多いのはコンサルタントや企業広報です」(同)(以下略)