自民党の安倍派・二階派といった派閥の政治資金規正法違反に対して、捜査のメスを入れている東京地検特捜部。岸田文雄首相は当初から「落としどころ」を見極めたうえで、年明け以降の政権をどう運営していくのかについて頭を悩ませてきたようだ。そんな中、法務検察側からあるメッセージが届いたものの、その意図を図りかね、結果としてミスを犯し、大きなリスクを抱えることになってしまったのだという。「聞く力」はさておき、危機に際しての「対応力」「分析力」「思考力」の低さをまざまざと見せつけることになった岸田官邸の現状をレポートする。
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「岸田官邸は特捜部の捜査の最終目的地点を見極めつつ、年明けの通常国会以降の政権運営方針を定めようとしてきました」
と、政治部デスク。
「とはいえ、“切れるカードがない”というのが残念ながら官邸幹部らの合言葉のような状況です。政権浮揚策がない中、できるだけ早いタイミングで派閥の今回問題となった政治資金パーティーなどに関する改革を検討するため、新たな組織を立ち上げる考えが示されましたが、中身は全くと言って良いほど固まっていません」(同)
メザシの土光がいれば……
組織を取り仕切る人物についても……。
「萩生田光一政調会長の後を受けた渡海紀三朗氏の名が上がっていますが、仮にそうなったとしても始まる前からアピール度や中身の充実度の低さがハッキリと見えますね。“メザシの土光”みたいな人がいたらなぁという言葉が関係各所から漏れているそうです」(同)
「メザシの土光」とは、昭和50年代から60年代にかけて「土光臨調」とも称される行革で辣腕をふるった土光敏夫氏を指す。土光氏の食卓がメザシなど質素なメニューだったことから、このニックネームが定着したとされる。清貧を絵に描いたような人物が新組織を取り仕切るなら確かに説得力はあるのかもしれないが、そもそも土光氏は行革に取り組んだ時には、すでに財界での実績も知名度も抜群の存在だった。そんな人材が党内にどれほどいるのかははなはだ怪しいので、ないものねだりに等しい願望と言えそうだ。
官邸は特捜部の捜査の行方をどう見極めていたのか?
検察側のメッセージ
「検察側からは、“有名人を立件する”といったメッセージが記者らに投げかけられており、知名度の高い政治家のさまざまな名前が取り沙汰されています。大物とされる議員は衆議院に多いのですが、一方で参院は体質的に問題がより根深いとの指摘もあるなど、情報が錯綜しています。いずれにせよ複数人の立件は避けられないと見られています」
と、社会部デスク。
そんな検察側は一方で、政権側にこんなメッセージを送っていたという。
「法務省の事務次官や官房長を通じ、“捜査は1月16日でひと段落”とのメッセージがあったとされています。こういった情報は通常国会をいつ開会するかを決めるにあたり極めて重要です。予算審議に関しては概ね18日程度かかるとされており、国会の開会日がずれ込めばそれだけ予算の成立に影響を及ぼすことになります」(同)
結果として政権は22日もしくは26日の開会を検討中だ。
「そのチョイスには政権・与党内からブーイングがあがっています。検察のメッセージに嘘はないですし、国会が始まれば捜査の手を引っ込めざるを得ない。16日でひと段落ならば、19日に開会し、多少の余裕をもって予算審議を行えたはずなのです。仮に26日なら金曜日ですから実質的には月曜日の29日開会ということになってしまいます。開会日を遅らせることで、事件と国会審議との期間を少しでも長くして、影響を小さくしたいという思惑もわからなくはないですが、予算成立への影響を懸念する声があがるのも当然でしょう」(先の政治部デスク)
火種を抱えた
始まる前から国会運営に支障をきたしかねない状況になっているというわけだ。まさに綱わたりの印象で、永田町界隈では「どうしてこういう選択になったのか不思議」との感想が主流なのだという。現場を仕切るのは国会対策委員長とはいえ、通常国会の開催日に関しては岸田首相の意向が強いとも指摘されている。
「多少開催日を後ろ倒ししたとて、予算委員会では野党から集中砲火を浴び、それがワイドショーも含めて格好のコンテンツになることは目に見えています。この判断はミスだったのでは」(同)
岸田首相は一連の騒動を受けて「国民の信頼回復のために、火の玉となって、自民党の先頭に立つ」と訴えたが……。