(中山有季)
■退職したばかり、次の仕事探しているけれど
就職氷河期世代向け―。8月下旬、長野市内で開いた就職支援セミナーの会場に、長野県の北信地方に住む玲奈さん(49)=仮名=の姿があった。正社員就職を希望する人が対象。玲奈さんは契約社員として9年間働いた運輸関係の会社を退職したばかりで、次の仕事を考えていたところだった。
少し前から、政府が急に氷河期支援を強調し始めた印象がある。「今更どんな支援をしてくれると言うのだろう」。玲奈さんは、どんな内容か聞くだけ聞こうと参加した。
ハローワークの担当者が、年齢や正規で働いた合計期間が短いなどの条件を満たす人が正規雇用で就職すると、企業に助成金が支給されるという支援内容を説明。介護、保育、建設など人手不足の分野で高い求人倍率になっているといった話もあった。
■政府が始めた氷河期世代支援 でも個人を見てくれるわけじゃないんだ
「今まで頑張ってきた個人を見てくれるわけじゃないんだ」。就職氷河期という名前だけが、独り歩きしていると思った。応募書類の作成や面接時のポイント解説もあったが、長年、非正規で事務職を続けた玲奈さんは、「その経験がキャリアとしては認めてもらえない」とも感じた。
■国立大卒、大手2社に応募も不採用 選んだのは自由な働き方
玲奈さんは1997年に近県の国立大教育学部を卒業。教員免許は取ったが、教員には向いていないと思い、一般企業への就職を考えた。ただ、学部内では就職活動の情報がほとんどなく、活動の仕方も分からない状態。大手の2社に応募したが不採用だった。
そこで注目したのが当時広がり始めていた派遣社員だった。95年に日経連(当時)が提言「新時代の日本的経営」を公表。派遣など非正規労働者を「雇用柔軟型」と名付け、人件費を抑えるために活用する方向性を示した。労働者が自由な働き方を模索する動きと相まって、好意的に受け止められた面もあり、玲奈さんも「合理的で魅力がある」と考え、派遣社員を選んだ。
■正社員のフォローに上がらない時給…どんどん理不尽な状況に ※略
■「頑張っても報われない」 ※略
■転職も住宅ローンも「非正規・独身の壁」 ※略
■自分たちが少子化の原因か ※略
■「子育てファースト」政策の犠牲に ※略
■結婚して夫に扶養=「標準世帯」への違和感 ※略
■不安定なのは自己責任?
非正規で不安定な状況や独身でいることを「自己責任」で片付けられがちな世の中は、「すごく悲しい」。「誰もが1人になる可能性を持っている。頼れる人がいない状態になったり貧困に陥ったりすることは人ごとではないはずですよね」