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「湯浅の1球」その手にあったグラブのヒミツとは 日本シリーズで甦った湯浅京己(阪神)が明かす秘話
湯浅の1球」―。
今年の日本シリーズを振り返るとき、絶対に欠かせないシーンだ。10月1日の第4戦、同点の八回。2死一、二塁でその名がコールされると、甲子園球場は割れんばかりの拍手と歓声にわいた。
その空気に後押しされるように、わずか1球で中川圭太選手をセカンドフライに打ち取ると、湯浅京己投手は右拳を握って笑顔を弾けさせた。
シーズン中、度重なる負傷で離脱していた右腕の劇的な復活。そして見事な火消し。完全に流れを変え、チームはサヨナラ勝ちで星を五分に戻した。
38年ぶりの日本一への大きな分岐点だった。
36: 風吹けば名無し 2023/12/30(土) 11:23:03.22 ID:jywqWXRx0
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5447779f31ca8c641f9f25009b6ace6b26c4e317
もう一つ、湯浅投手のモチベーションを上げたできごとがあった。リーグ優勝の胴上げ直後だ。その輪が解け、マウンド付近で選手や関係者が入り乱れていたところ、岡田彰布監督が目の前に現れた。
とっさに「すみません…」と口にしていた。クローザーとしてスタートしながら、チームの力になれなかったことを常々申し訳なく思っていたからだ。
すると岡田監督は一言、「まだ終わりじゃないからな」と発した。「うわってなった。泣きそうになったっす」。思わぬ指揮官の言葉に心が震えた。たまらなく嬉しかった。
続いて安藤優也コーチと久保田智之コーチも二人して駆け寄ってきてくれ、「待ってるからな」と声をかけてくれた。「あそこに行けてよかったな…」。しみじみと感じ入った。
「今まで以上に、最後なんとか力になりたいという思いは強くなった」。
10月31日に合流すると、翌11月1日の朝、三重県に住む母・衣子さんから「今日、投げる気がする」と電話越しに言われた。そう、その日は10月24日に逝去した父方の祖母・忍さんの誕生日だったのだ。忍さんは生前、孫の登板をそれは楽しみにしていた。
「そのときは『あ、そうなんや』くらいだったけど、でもやっぱずっと頭に残ってるから『ベンチ入るんかなぁ』と思いながら練習に行ったら、集合したときにベンチ入りを言われて。そしたら、『うわぁ~、ほんまに投げるんちゃうかな』って、だんだん思いだした」。
リリーフカーに乗っているときは「あー!すげぇ!すげぇ!」と胸が高鳴り、マウンドで投球練習を始めると「わっ!ほんまに投げてるわ」と驚きが勝った。と同時に、「おかあさん、さすがやな」とも思った。そして、1球で抑えてベンチに帰るとき、「うわ!すごいわ!」と思うとともに、「ありがとう。力くれたんやな」と、おばあちゃんに感謝した。
「久しぶりやから自分の気持ち自体がどうなるんやろうっていうのはあったけど、めっちゃ楽しかったっす。少しでも力になれたんじゃないかって思えたから、そこはホッとした」。
湯浅投手も今でも思い出し、岡田監督への感謝を口にする。
「あんなとこで使ってくれるなんて誰も思ってないし、監督はほんまにシンプルにすごいと思う。ありがたいっす」。
チームメイトですら驚く起用に、頭が下がるばかりだ。