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完全封鎖:北朝鮮国境地帯の新たな地雷と電流装置による脱北不可能化
コロナ禍が始まった2020年以降、首都・平壌の中間層からも餓死者が続出するなど、未曽有の食糧危機が表面化している北朝鮮。実は1990年代半ばの深刻な食糧危機、いわゆる「苦難の行軍」と呼ばれた飢餓地獄の際、祖国を捨てて韓国に逃げ出す脱北者が急増した。
韓国統一部の統計によれば、苦難の行軍の最終年とされている1998年、脱北者の数はおよそ1000人へと急増。その後も飢餓や餓死への恐怖から脱北者は増え続け、2009年の脱北者数は1998年の3倍に相当する約3000人へとハネ上がった。
2009年にピークを迎えた後も、毎年の脱北者数は1000人超えで推移。ところが最少で数十万人、最多で数百万人の餓死者が出たとされる苦難の行軍を超える、ここ数年の食糧危機が始まった2020年以降、韓国への脱北者数は急減してしまったのだ。事実、2022年の脱北者数はピーク時の40分の1以下、わずか67人にとどまっている。いったいなぜか。
「北朝鮮と韓国の軍事境界線一帯、いわゆる38度線一帯は監視や警備が厳しい上に、無数の地雷が敷設されているため、事実上、中朝国境から中国入りするルートしかありません。中国から陸路でいったん東南アジアを経由し、そこから韓国に逃れるのです。ところが金正恩総書記は2020年1月、新型コロナウイルスの流入を阻止するとの名目で、中朝国境でのヒトやモノの往来を全面的に禁止するとともに、唯一の脱北ルートだった中朝国境ルートの完全封鎖に乗り出したのです」
事実、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が公表した衛星写真分析によれば、中朝国境を流れる豆満江沿いのフェンスが強化、新設されたのに加え、50メートルごとに監視所が設置されたことが確認されている。北朝鮮ウォッチャーが続ける。
「脱北阻止のためのフェンスは二段構えとなっており、頑強なコンクリートや鉄条網などで造成されているほか、鉄条網の一部には一触で感電死する電流まで流されているようです。しかも独裁者として君臨する金正恩は2025年までに、全長約1300キロある中朝国境の全域にわたって、同様の非人道的なフェンスを張り巡らすと宣言している。中朝国境をすり抜けての脱北が絶望的かつ不可能となるのは、時間の問題でしょう」
飢餓と餓死に怯える北朝鮮人民は今、事実上の「拘禁状態」に置かれているのだ。(つづく)
(石森巌)
コメント:「北朝鮮の拷問、粛清、飢餓に関する報道を見るたびに、胸が痛みます。国境地帯にまで電流を流すなんて、人道的な視点から言えば許される行為ではありません。これからも人権侵害の真実を広め、国際社会で何かを変えるべきです。」
コメント:「北朝鮮の極限状況についてこのような記事を読むと、絶望しか感じられません。国境地帯に地雷が埋まり、人々が餓死や拷問に苦しむなんて、人類の進歩とは程遠いです。国際社会が一つになり、北朝鮮の人々に対する支援や救済活動を強化する必要があります。」
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