地検は男の事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を今年2月13日から2度目の延長を経て、8月4日まで実施。さらに同10日から2度目を始め、1度の延長を挟んで今月15日に終えていた。地検は計10カ月に及んだ鑑定留置の結果、男の刑事責任能力を問えると判断した。
起訴状などによると、昨年12月25日午前7時過ぎ、飯能市美杉台4丁目の住宅敷地内で米国籍の男性=当時(69)=に対し、おの(刃体の長さ約7・5センチ)の刃を頭部などに複数回たたきつけた上、別のおの(同約9・8センチ)で後頸部(けいぶ)などを複数回殴打し、死亡させた。さらに、同おので妻=同(68)=と長女=同(32)=の頸部などを複数回殴って殺害した後、住宅内に灯油をまき、火を放って1階リビング天井などを焼損(面積計約22・8平方メートル)させたなどとされる。
地検は男の認否を明らかにしていないが、8月10日に非現住建造物等放火と銃刀法違反の疑いで追送検された際の県警の調べには、殺人容疑を含め全ての容疑について「やっていない」と否認。捜査関係者によると、鑑定留置終了後の県警の調べに対しても、これまでと同様に容疑を否認していたという。動機に関しても一切語っていない。
男は、昨年1月に男性方に止められていた車などに投石し、傷を付けたとして器物損壊容疑で現行犯逮捕された。男性方では一昨年8~12月にも車や門扉を傷つけられる被害が計6回あり、その後、昨年2月までに同容疑で2度再逮捕されたが、いずれも供述を拒み続け、嫌疑不十分で不起訴となっていた。
事件発生から、間もなく1年。鑑定留置が計10カ月間にわたって実施された後の今回の起訴を受け、男の担当弁護士は「被疑者段階で鑑定留置を2回行うことは担当事件の中では初めて。おそらく全国的にも異例中の異例なのではないか。鑑定書を確認した上で、これからの方針を検討したい」と話している。