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【武藤正敏】「お先真っ暗」状態を抜け出せるか、韓国が来年直面する4つの難題
2024年は、韓国にとって国の命運を左右する大きな岐路の年になるだろう。現在浮上している問題だけでも以下の4つの課題がある。いずれも困難な課題だが、2024年中に変革に着手できなければ、活力のなき国に成り下がるリスクが極めて大きい。
「国家消滅」が懸念されるほどの少子化
1、北朝鮮問題
北朝鮮の核ミサイルは危険な状況に至っている。北朝鮮は中ロと結託し、国連安保理を無視して傍若無人に振る舞っている。核実験はここしばらく自制しているが、偵察衛星の打ち上げを成功させた。これにはロシアの技術支援を受けたようである。固体燃料型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)打ち上げも頻繁に行い、その性能を高めている。米国を直接攻撃する能力の保有も近いかも知れない。
2、急激な少子化
韓国の少子化のペースは早まっており、このままでは国が消滅するとの危機感が生まれている。というのも韓国の若者には子供をつくる余裕がなくなり、結婚さえも諦めるムードが漂っているからだ。
3、国内の分断と対立
日本に比べ貧富の格差が大きい韓国だが、近年その格差はますます広がっている。それに合わせて、社会の分断も、以前から指摘されていた慶尚道vs全羅道という地域の分断から、経済格差による分断、世代間の分断、性別に基づく分断まで多方面にわたってきている。
4、与野党の激しい対立
与野党の政治的対立が激しさを増している。国会で多数を占めているのが野党「共に民主党」であるため、政治的空白が生まれやすく激動の時代に対処できなくなっている。2024年の国会議員選挙に向かって対立は一層深まるであろうし、選挙後も対立は続きそうである。
(略)
韓国は経済的に発展した反面、繁栄から取り残された若者や貧困高齢者にとっては極めて暮らしにくい社会になっている。カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した映画『パラサイト 半地下の家族』を見れば想像がつくだろう。社会の分断は経済格差、世代間、性別にまで広がっている。
その深刻さが表れているのが、韓国人の死亡原因だ。20年も韓国が経済協力開発機構(OECD)加盟国で自殺率1位であった。特に、10~30代の自殺は年々増加しており、20代女性は20年までの5年間で55%の急増である。
高齢者については自殺こそ減少傾向にあるが、高齢者の貧困率はOECD加盟国中最大である。
青年が自殺を考える理由は学業ストレス、対人関係、家族問題が多い。韓国では特権階層の人を除き、多少頑張っても生活の質を高めるのが難しい現実がある。特に女性については生活に希望を持てない人が多いのだ。
韓国人は激しい競争に耐えて大学に進学している。韓国では大学の学位取得者は70%でOECD加盟国中最も高いのである。しかし、いい大学を出ても、社会的バックのない人は、いい就職口を見つけられない。失業者全体の31%が15~29歳の若年層で占められている。
良い就職口を見つけられない若者は、恋愛もできず、結婚、出産もままならない。家も持てない。これが若者の行き先だ。韓国社会が、若者が自暴自棄になりやすい素地を形作っていると言える。
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このように韓国政府も総選挙モードの態勢に入ってきた。
大統領制の韓国では、政権交代の影響は激烈だ。特に文在寅政権を支えた共に民主党から大統領の椅子を奪った尹政権は、韓国社会の変革と北朝鮮への対応の抜本的な見直しを行おうとしているので、韓国社会はさまざまな箇所で方向転換の軋みが出ている。
こうした中で実施される総選挙だけに、与党を批判する人々の票が野党に流れる事態も予想される。総選挙でまた民主党が大勝するようなことになれば、尹政権は今以上に苦しい立場に追いやられる。もしも勝てれば、現在の政府・国会のねじれ構造が解消され、さまざまな改革を進めやすくなるはずだ。
果たして韓国は「消滅」の危機を乗り越える道へ大胆に舵を切ることが出来るのか。来年4月10日の総選挙が韓国の近未来を決定づけると言っても過言ではない。