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どれだけ知ってる? 教習所で教わらないバイクTips 第33回 あこがれの旧車・絶版車、乗るのはやっぱり大変?
コロナ禍以降もバイクブームが続いていますが、すでに生産が終了した旧車・絶版車の人気も高まっています。中高年のリターンライダーは若い頃にあこがれた存在であり、10代や20代の若い人も現代のバイクにはない魅力を感じているようです。
古いバイクは故障も多いため、高額な維持費を覚悟しなければならないと言われています。実際には個体差や個人の考えかたによって差がありますが、今回は、こういった旧車・絶版車について解説します。
■外装やエンジン以外もチェック! 購入時に注意したいこと
新車と違い、中古車は車両の状態によって販売価格に差が出ます。製造から長い年月が経過した旧車・絶版車はさらに個体差が大きくなっているうえ、希少車や人気のある名車はプレミアもつき、当時の新車販売価格を上回るようなことも珍しくありません。
旧車の購入を考えている人が一番心配するのは、やはり「故障」です。古い機械が壊れる原因は長期間使われたことによる各部の摩耗のほか、サビや腐食といった経年劣化によるものですが、年式や走行距離が同じでも、それまでの扱われ方やメンテナンスの内容によってコンディションに大きな差が出ます。販売店は売る前に点検して、必要であれば整備しますが、それをどの程度まで行うかはお店によって異なります。
気になる車両が見つかった場合、まずはエンジン音を聞いて調子をチェックしたいものです。機械に詳しくなくても、購入後に走行不能になって修理にかなりのお金がかかるのが心配だからですが、旧車の場合はほかにもしっかり見ておきたい部分があります。それはフレームやタンクをはじめとした金属部品のサビや腐食のほか、電装パーツや配線の腐食です。これは多くのレストア愛好家を悩ませるところで、ひどい場合はエンジンを下ろして溶接したり、不具合のある電装配線を新規で作り直すなど、エンジンの修理よりも厄介になることもあります。
もしも相場より安くてピカピカの極上車を見つけたとしても、慌てて飛びつくのはおすすめできません。最近は走行距離の改ざんや事故車を売るような悪質なお店は減りましたが、相場より安いバイクには必ず何かのワケがあるものです。店員に理由を聞いても納得できないなら即断せず、売れてしまったら『縁がなかった』と割り切りましょう。
その逆に、年式相応の走行距離と車体のヤレがあったとしても、新車から定期メンテや修理がしっかり行われ、重要な部分のコンディションが良好に保たれた個体もあります。あまり焦らず、できるだけ多くの車両を見ていけば納得できるものに巡り合えるはずです。
■メーカーからパーツが出ないことも! 人気モデルは盗難にも注意
納得できる個体が見つかったとしても、古いバイクは多少の故障は覚悟しなければなりません。不具合が出た部品は交換しますが、販売終了から10年以上経過したモデルのパーツは廃盤になっていることもあります。その場合は、壊れた部品や中古品を修理して再利用したり、他車の部品を加工・流用するのが一般的です。こういった特殊な修理はメーカー直系のディーラーでは断られることも多いですが、旧車や絶版車を扱う専門店や、昔から修理をメインにしてきたバイクショップはノウハウをよく知っています。
また、人気のあるメジャーな旧車は中古パーツが入手しやすく、パーツメーカーやバイクショップから補修パーツが販売されていたりします。これに対してマイナー車は中古パーツや補修部品がほとんど出回らないため、万一のときには自力で直す手段を探したり、高いお金を払って一品物で部品を作らなければなりません。人気車に比べれば車両自体は高くないので、マニアの中には部品取りの車両を確保している人もいます。
そのほか、異常なほど高騰している人気の旧車はパーツ転売のために盗難されることも多く、「ホンダCBX400Fシリーズ」のように保険会社が盗難保険の加入を断っているモデルもあります。路上駐車のチェーンロックだけでは意味がなく、犯人が検挙されて戻ってくるケースは非常に低いため、複数の物理ロックや追跡用GPS端末の装備などの対策をしたり、セキュリティ付きガレージも検討すべきでしょう。
近くに古いバイクのトラブルや特殊な修理にも対応できるバイクショップが見つかれば一番心強いですが、同じモデルのオーナーズクラブやSNSのグループに加入してノウハウを身につけていくのもよいでしょう。
こういったコミュニティでは、さまざまなトラブルシュートの経験を持つオーナーが在籍しており、交流を深めていくことで故障を未然に防ぐ対策方法や、流用可能なパーツ情報、腕の良いショップの紹介や、修理の相場といったものを共有してくれるはずです。
しかし、いくら同じ旧車・絶版車乗りになったからといっても、『仲間だから助けるのは当たり前』という態度では嫌われてしまいます。グループ内で片っ端から希少な廃盤パーツをかき集め、忠告を無視した乱暴な扱い方でバイクを壊し、飽きたら車両やパーツもネットオークションで売り払ってフェードアウトする身勝手な人も中にはいるようです。
こういったコミュニティに参加する場合、礼儀や相手を思いやる気持ちが大切です。同じ旧車乗りとして助け合い、楽しさを共有していくことを心がけ、バイクを乗り換えた後でもOBとしてつながりを持ちつづけている人もたくさんいます。
■旧車・絶版車といってもジャンルや楽しみ方はさまざま
旧車や絶版車というと、国内4メーカーなら70~80年代の中・大型車などが代表的です。堂々とした「単車」の存在感や、空冷エンジンの造形と力強い爆発音、豪快な乗り味など、現代のバイクにはない強烈な魅力を持っています。設計は古くてもしっかり整備されていれば変なクセもなく、意外と頑丈です。このジャンルは車両や維持のコストもそれなりに必要ですが、『あこがれバイクに乗れるなら安いもの』と考える人は少なくありません。
また、クルマなら「ネオクラシック」に該当するのが80~90年代の2ストロークや中型のレーサーレプリカです。中高年の方は青春時代を過ごした懐かしいバイクたちですが、車体も軽くて扱いやすいうえ、パワーも十分すぎるほどあります。50代で現行モデルを買ってリターンした後、バイクショップで若い頃に乗っていたモデルを見つけ、衝動的に乗り換えてしまった人もいます。
そのほか、古い小型のスクーターやミッション車、カブなども立派な旧車・絶版車です。車両やパーツの価格も手ごろで構造もシンプル。エンジンなどを改造しても法定速度内で効果を体感できるので、DIY好きのライダーなら必ずハマるジャンルです。バイクの構造や旧車メンテの知識を学べるため、まずはこういった小型車から始めていくのもよいと思います。
これ以外にも、まだ旧車とは言えない90~00年代の絶版車があります。この時代のバイクは現代のバイクと同等の性能を持ち、程度のよい個体も多いので安心して乗れるはずです。キャブレターを採用していた最後の世代ですが、手動チョークによる始動の儀式や、インジェクションとは違うダイレクト感のあるスロットル・フィーリングが楽しめます。
旧車・絶版車は星の数ほどありますが、それぞれ個性的な魅力を持っています。あなたも一度味わってみてはいかがでしょうか?
津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら
(津原リョウ)
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