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【回線使用料問題】 韓国のネット環境にノーを突きつけた米国のプラットフォーマー
世界的に人気の高いゲーム配信プラットフォーム「Twitch(トゥウィッチ)」が、
高額な回線使用料を理由に韓国市場からの撤退を宣言したためだ。
トゥウィッチは、米アマゾン・ドットコム子会社であるトゥウィッチ・インタラクティブ(Twitch Interactive)が提供する
ライブストリーミング配信プラットフォームである。
・ネットフリックスと訴訟合戦
実は、韓国の回線使用料を巡っては、米社と韓国の大手通信会社が派手な訴訟合戦を繰り広げ、それが決着したばかりだった。
米ネットフリックスに対して韓国通信大手のSKブロードバンド(SKB)は、回線使用料の支払いを求めて提訴した。
SKBは「ネット回線は、構築費用や維持管理には相当な投資と維持費用が必要であり、
ネットフリックスは対価の支払いなしに回線を利用している」と主張。
特に、SKB回線でのネットフリックスの通信量が急増したため、それに対応するネットフリックス専用の回線を用意するなど、
回線整備に多額の投資負担をしてきたと主張した。
これに対し、ネットフリックスは「支払い義務はない」と突っぱね、互いに訴訟合戦となったのだ。
ー中略ー
そんな矢先にトゥウィッチが2024年2月27日に韓国から撤退すると宣言したのである。
・韓国における特異な歴史
インターネット回線は世界の共有資産であり、特定の集団が所有する私有財産ではないという世界的な不文律に従っているからだ。
ところが、韓国では韓国のネット企業ができた初期段階から通信会社とトラフィックによる従量制の契約を結んできた歴史がある。
トラフィックが増加すると、通信会社の負担が増える。だからといって最終ユーザーの料金を値上げしようとすると、国民の反発が予想される。
国民の声は政府にとっては神の声だ。このため韓国政府は料金の値上げには反対する。
だから、通信会社は手っ取り早くコンテンツ企業から回線使用料を取っていたのだ。
しかし、法律で決まっているわけではないので、ネットフリックスも突っぱねたわけだ。
韓国国内のネット企業であるNaverやカカオ、アフリカTVなどは、文句も言わず韓国の通信会社に高い回線使用料を支払っている。
ネットフリックスのような膨大なトラフィックを増加させるビッグテック企業が韓国に進出する前まではそれでよかった。
だが、海外のビッグテック企業が韓国市場に参入してから事情が変わった。
今までとは比べ物にならないほどのトラフィック増加を起こしているのに、トラフィック増加分の回線使用料を払おうとしないからだ。
これまで、黙って回線使用料を払ってきた韓国のコンテンツ企業は、国内企業は払っているのに海外企業が払わないのはおかしいと思っている。
前述のアフリカTVのような意見が出るのはこうした理由からだ。
・海底ケーブルを持たない韓国
だが、問題の根はもっと深い。
韓国の通信会社は、海外との接続で直接インターネット回線を構築しておらず、海底ケーブルを設置した米国の会社にお金を出して、
回線を使用している。
米国企業が設置した海底ケーブルを利用して顧客にサービスしながら、米国の会社に回線使用料を請求していることになる。
世界の主要諸国のうち、韓国の通信会社は膨大な量のネットトラフィックを国外から提供してもらう唯一の国だ。
韓国は中国や日本を経由せずには米国や欧州とつながる回線がない。
韓国の通信大手は、費用負担を減らすために「回線使用料を賦課させる法律」を作ろうと八方手を尽くしている。
結局、しわ寄せはすべてユーザーに降りかかるだろう。
トゥウィッチ撤退は、グローバル企業1社の撤退というだけではなく、韓国のインターネットサービス全体に大きな波紋を投げかけている。
アン・ヨンヒ
JBpress 2023.12.23(土)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78569