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“食品のやわらかさや伸びを数値化”して「高齢者食」や「食品の開発」に活用…東京農大が研究をおこなう「食品物性学」とは?
川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。12月5日(火)と12月12日(火)の放送では、食品利用安全学研究室の阿久澤さゆり(あくざわ・さゆり)教授に、食品物性学について、現在、阿久澤教授が研究をおこなっている“ようかんの食感の違い”について伺いました。
阿久澤さゆり教授、川瀬良子
◆食品物性学ではどのような研究をしている?
まずは阿久澤教授の専門領域である食品物性学について伺うと、「食品の“硬い”“やわらかい”“流れやすい”“ドロドロしている”など、食品に「力」を加えたときの変化の様子(挙動)を解析していく学問です。なお、口の外で計った食品の物理的な性質を“物性”。口のなかで噛んで、私たちが感じた食品の性質を“食感”と区別しています」と説明。
口のなかに入れたときに感じる“硬い”“やわらかい”などの感覚は「人それぞれ尺度が違う」と言います。食品物性学では、食品を機械で押して、どの段階で壊れるのか、うどんなどの麺を引っ張ると、どこまで伸びるのか、などを計測し、「潰れまいとして押し返す力の大きさを比べることによって、やわらかさ(硬さ)を比較することができます」と話します。
物性を数値化することで、私たちの生活にどのように役立つのかというと、主に嚥下(えんげ)困難者(飲み込みが難しい方)用の食品や高齢者食、そして食品の開発の分野などで、実際に活用されていると阿久澤教授。
「例えば、じゃがいもの場合、やわらかいほうが食べやすい人がいれば、硬くても食べられる人もいます。なので『このぐらいまで煮ないと食べにくい』『このぐらい(の硬さ)まで煮てあるので、適した人に食べてもらってください』というように、(食べる人の)噛む能力によって硬さをコントロールし、提供することにつなげることができます」と解説します。
◆「ようかんの食感」は奥が深い?
「物性」を日々研究している阿久澤教授が、なかでも詳しく調べているのが“ようかんの食感”だと言います。
ようかんに使われている豆には、小豆(あずき)、白小豆(しろあずき)、福白金時(ふくしろきんとき)、手亡(てぼ)という4種があり、阿久澤教授いわく、これらの豆の配合によって食感などに違いが出るそうで、「豆が育った年の気候で、粘度などの性質がわずかに変わってしまいますが、(和菓子屋などでようかんを)買ったとき、いつも食感はほぼ同じですよね。これは、職人さんが豆の煮上げを感覚で調整していらっしゃるようなんです」と語ります。
そうした調整は、職人が長年の経験によって培った感覚によるものがほとんどですが、それを研究によって数値化することで、味を次の世代に受け継ぎやすくなることも期待されています。
また、阿久澤教授は“原材料”にも着目し、「(食品物性学によって)このようかんにはこの豆が必要不可欠なので、どれだけ収穫量が少なく、育てるのが難しいものでも『必要だから頑張って育ててください』と農家さんにお願いする理由にもなっていくと思います」と言及。食品物性学は“作物を守る”という面にもつながっているようです。
2週にわたる阿久澤教授の話に、川瀬は「これから何かを食べるときに、噛むたびに(食感などを)いろいろと考えながら食べたくなっちゃいますね」と笑顔をのぞかせます。さらには、果物の糖度が可視化できるように、食品の硬さの“数値化”“見える化”が可能になれば、好みの硬さのものが味わえるようになるなどの期待も膨らみ「今後がすごく楽しみ」と話していました。
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