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【日中】新疆ウイグル、内モンゴル両自治区 人権侵害非難決議の採択見送り 誤ったメッセージ懸念 自民公明
衆院本会議に臨む菅義偉首相(後列中央)ら閣僚。中央列は幹事長ら自民党幹部=16日午後、国会(春名中撮影)
新疆(しんきょう)ウイグル、内モンゴル両自治区などでの中国当局による人権侵害行為の即時停止を求める国会決議案の採択は、16日に通常国会が閉会したことで見送られた。欧米諸国が中国の人権問題に厳しい視線を向ける中、日本の足踏みは国際社会への誤ったメッセージとなりかねない。
全会一致を原則とする今回の決議をめぐっては、自民党の保守系議員が春先から他党との調整を担ってきた。文案に中国の国名が明記されなかったのは、伝統的に中国共産党政権と結びつきが強い公明党の合意を得るための苦肉の策で、非難決議としての意味合いが弱まることを懸念する声もあった。
会期末が迫る中、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党は党内手続きを経て決議案を了承。共産党も与党の対応を踏まえ、足並みをそろえる方向だった。ところが、肝心の与党の調整が難航。15日の自民、公明の幹事長会談を経ても結論には至らず、タイムリミットを迎えた。
自民には、親中的な公明が採択に及び腰だったことが見送りの原因との声がある。一方、公明は閉会間近まで自民から正式な交渉の呼びかけがなかったとして、「根回し不足」(幹部)を指摘する。
13日に閉幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明では、ウイグル自治区での人権侵害に懸念が示された。それだけに、抑制的な内容の決議案ですら採択に持ち込めなかったという事実は今後、与党に重くのしかかる。
秋までに行われる衆院選への影響も軽視できない。採択見送りが、中国の強硬な振る舞いを警戒する保守層の疑念を招く可能性があるからだ。また、与党の人権問題に関する公約が説得力を失うとの見方もある。
産経新聞 2021/6/17 00:09 奥原 慎平
https://www.sankei.com/article/20210617-K2FXRQOKOJLHJGMCVVUDLMERLA/