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【怖かった。京アニ事件思い出した】『少女革命ウテナ』監督に”盗作指摘”繰り返す女性に賠償命令
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『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』など、人気のアニメ作品を手がけたクリエイターの幾原邦彦さんが、見ず知らずの女性から「イラストが盗作された」と主張されて、取引先にメールを送られるなどしたとして、慰謝料など440万円をもとめた裁判。
東京地裁立川支部(加藤紀子裁判官)は12月13日、名誉毀損や業務妨害があったと認めて、女性に121万円の支払いを命じた。
幾原さんにとっては、「盗作」という主張はまったく身に覚えのない「荒唐無稽」なものだったが、放置できなかった。その胸に去来したのは、多数の死傷者を出した「京アニ事件」だったという。
判決後の記者会見で、相手の女性に対する「怖い」という率直な気持ちを口にした幾原さんは、業界で同様の被害が多発していると心痛な思いを語った。現在、警察が1日2回、幾原さんの自宅周辺を巡回しているといい、民事の判決結果をもって、刑事でも被害届を提出する考えだ。
幾原さんは『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』などの監督作品を含めて、数々の有名作品を手がけてきた人気クリエイターだ。
そのかたわら、声優らと音楽バンドを結成。CDアルバム発売イベントライブを予定していたが、ライブを3カ月後に控える2022年4月、イラストレーターなどを名乗る被告女性からX(旧ツイッター)でDMが届いた。
バンドを組んだ声優が宣伝の一環としてXにアップしたイラストが、女性が描いたイラストの盗作・トレースだと主張するもので、CD販売の中止も求めてきたという。
幾原さんは、DMに添えられた画像を見比べて「まるで違うものだった」と感じた。
しかし、女性はその後も幾原さんのCD販売元のディスクユニオンや『少女革命ウテナ』の漫画を出版した小学館、『少女革命ウテナ』のアニメ制作会社、声優の元所属事務所などの取引先、スポンサーにもメールを送り、同様の主張を続けたという。
また、女性は声優のXについて著作権侵害を理由とした削除をもとめてDMCA申請までおこなった。
同年4月、幾原さんは警察に相談した。多数の死傷者を出した京都アニメーション放火事件が頭をよぎったからだ。あの事件の被告人もまた動機は「盗作」にあったとされている。
ライブは警備上の懸念で中止に追い込まれた。
2022年6月に提訴してからも、女性は出版社に同様のメールを送り続けたそうだ。そのため、訴額を増やした。
●スポンサーやクライアントを狙うのは「成功体験があるからだ」
今回の判決を受けて、記者会見を開いた幾原さんは「こちらの言い分がほぼすべて認められたと解釈していて、判決には満足している」と評価した。
「トレースだという主張は荒唐無稽で、線は重なっていない」 「送られたメールは電話帳1冊くらい。はっきり言って嫌がらせ」
荒唐無稽であっても、確実に創作活動において「ダメージ」を受けたという。
「こんなことをされていると、クリエイティブな活動は難しい。被告は我々の仕事にスポンサーが欠かせないとわかっている」
あるスポンサーは、幾原さんに「ほかのクリエイターに矛先が向かうから、表立って味方だと言えない」と苦しい胸のうちを明かしたそうだ。
「スポンサーやクライアントが問題を抱えていると考えて、私から距離をとるのは当然のこと。被告はそれをよくわかっている。卑怯な行動だ。やれば、私が困るだろうと自覚しているんです。どこかで成功体験を重ねているからこその行動だ」
民事の判決をもって、業務妨害やストーカー規制法違反などで被害届を提出する考えだ。
「この種の迷惑行為はとても多いが、SNSで盗作行為と主張されたり、取引先にメールで虚偽申告された側はどのように対処したらわからない。裁判で判例を作ろうとしたのは、毅然とした態度を示すことで一定の抑止にしたかったのと、業界内で対応の経験を共有したかった」
まさに毅然とした態度で語り続けた幾原さんだが、記者会見で「怖い」という言葉を繰り返す場面があった。
「非常に怖いです。裁判を傍聴した人ならわかってくれると思う。出廷した被告は非常に怖かった」
●法廷の様子を振り返る…庵野秀明監督も同様の被害
8月の本人尋問で、初めて幾原さんは女性と対峙した。幾原さんは「とても怖い」と打ち明け、女性について「自分の怒りの感情をコントロールできない人だと考えています。法の力で止められないことが不安です」と心境を語った。
友人である庵野秀明監督からも「盗作行為を主張され誹謗中傷や迷惑メールが送り付けられていると聞いている」と明かした。
この期日では、女性から幾原さんに対する尋問もおこなわれた。質問ではなく主張を繰り返す女性を裁判長が制止する場面も十数回見られた。
女性は法廷で「X、Google、インスタグラム、ハーバード大学法科大学院が精査した上で、著作権侵害したという結果が出ました」などと主張していた。
●「裁判で投稿を止めさせることは難しく断念した」
「京アニ事件など、いわれのない誹謗中傷や盗作疑惑を流布する人は後を絶ちません。クリエイターやアーティストはダメージを受けてしまう。手立てがないのです。この裁判に多くの人が注目しています。クリエイターやアーティストの未来を担うものです。未来を照らさなかったら、先行きがないことになります」(法廷での幾原さん)
原告代理人の平野敬弁護士が記者会見で説明するところでは、裁判にあたって賠償請求だけでなく、投稿などの差し止めを求めることも検討したが、断念したという。
「投稿の差し止めは法的には難しい。これは『表現の自由』に対する侵害になり、ハードルが非常に高い。また、隠語を使ったり、言い回しを変えて似たような投稿は可能となる。本当はやりたかったけど断念した」(平野弁護士)
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幾原さんは警察に相談した。多数の死傷者を出した京都アニメーション放火事件が頭をよぎったからだ。あの事件の被告人もまた動機は「盗作」にあったとされている。
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