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【言うたったわ】日中首脳会談、暴走の懸念「漏らさず伝えた」岸田外交も「行動伴わず言葉だけ」と厳しい評価
「建設的、かつ安定的な日中関係の構築という大きな方向性を確認した。両国首脳同士で緊密な会談、意思疎通を図るということで一致した」
APEC首脳会議に合わせて開かれた日中首脳会談の概要について、岸田首相は記者団にこう意義を強調した。
予定を20分ほど超えた対面で、岸田首相は「懸案について漏らさず日本の立場を伝えた」(首相周辺)という。日本産食品禁輸の即時撤廃、ブイの即時撤去のほか、尖閣諸島はじめ日本周辺で活動を活発化させる中国軍への懸念、中国国内で拘束が相次ぐ邦人の釈放も要求したようだ。
〝毅然(きぜん)〟とした態度を中国側に叩きつけたとの説明だが、効果はあったのか。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「中国の暴挙を看過した末、会談では習氏に主張を黙殺された。中国側は『各国首脳が〝習詣で〟に殺到した』と、国内向けのアピールをしたかった。その狙いに岸田首相、外務省は見事にはまった」と語った。
ブイ問題では、フィリピンが同じケースで撤去を敢行した。一方、日本は国連海洋法条約に規定がないとして、撤去の要求にとどめている。
石平氏は「日本側が撤去すれば解決するが、放置すれば侮られる。邦人拘束の問題でも、中国に駐在する日本人の早期帰国を促して安全を確保し、経済面の圧力を強める段階なのに、具体的な行動はない。会談後に発表された『成果』は、空虚な言葉の羅列にしか受け止められなかった」と突き放した。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一名誉教授も、今回の会談を厳しく断じる。
「喫緊の課題のひとつは拘束された邦人解放だったが、何の成果もなかった。食品禁輸も『輸入再開を要請した』というが、対抗措置を明示する段階だ。〝力〟を信奉する中国を言葉で説得しても意味はない。行動が伴わなければ付け込まれるだけだ。結局、『首脳会談をしてほしい』という日本側の思惑ばかりが浮き彫りになった形だ。日本の国内世論の評価を得ようと、安易に外交に傾斜するようでは、余計に国益を傷つける」
(略)
内閣支持率が過去最低を更新する岸田政権だが、日中首脳会談は好材料となるのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「場当たり的な減税などが評価されず、政務三役の不祥事が続出するなど岸田政権の国内政治はボロボロだ。5月の広島G7(先進7カ国)首脳会議では、支持率が上がった〝成功体験〟があり、日中首脳会談も『気合』が入っているように見えた。ただ、岸田首相は外交ビジョン、戦略が乏しいと評されている。安倍晋三政権で4年7カ月、外相を務めたが、当時は安倍氏主導の官邸外交だった。日中首脳会談をめぐっても、支持率への〝色気〟が国民に見透かされている。一定の成果があったとしても、国民の評価は厳しいものになるのではないか」と分析した。
夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/article/20231119-AYIWRELSPBIAXPACUPQ5X363GQ/