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韓国で「犬肉禁止法案」が一向に進まない国情 ネット「大統領夫人がそう言うなら、俺は今日から犬肉を食べるぞ」
しかし、不思議なことがある。「犬肉禁止法案」だ。今国会には、まだ提出されていないが、与党も野党も犬肉禁止には「賛成」「推進」を表明している。瞬時に可決・成立しそうに思えるが、一向に動き出さないのだ。
11月に強行処理されたのは、俗称「黄色い封筒(月給袋のこと)法案」だ。「下請け企業の労組は、元請け企業に対して、労働条件に関する団体交渉権を持つ」ことを主眼とする内容だ。
大手建設会社なら、200社以上の下請け企業の労組と団体交渉をしなければならなくなる。
韓国は大統領制だから、国会で可決された法案に対して、大統領が拒否権を持つ。大統領が拒否しても、国会が3分の2の多数で再可決すれば成立するが、野党勢力は3分の2には達していないから、黄色い封筒法案は廃案になる。
ところが、犬肉禁止を推進する団体には、大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏が昔から関与している。今年4月にも、推進団体との昼食会で「犬肉の食用を尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の任期内に終息するよう努力する。それが私の本分だ」と述べた。
こんなことを言うから〝女帝〟批判も出るのだろうが、彼女の「犬肉禁止」の主張には強い支持が集まっている。
が、それは「金建希ごときの声に従い、犬肉禁止が実現するのは腹立たしい」との感情に結び付く。ネットには「金建希がそう言うなら、俺は今日から犬肉を食べるぞ」との書き込みが載り、賛同を集めた。
2021年9月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「犬の食用禁止を検討する時期が来た」と述べたとき、野党「国民の力」(現在の与党)のスポークスマンは、こう批判した。
「不快な食物だからと、国家が禁止を強制するのは市民としての自害行為だ」「多数が望んでいるから国家が介入すると主張するのはポピュリズムだ」
が、「国民の力」は与党になると、都市部選出の議員を中心に日和った。
では、犬肉禁止法案は成立するのか。
いや、与野党に大統領夫人が声を合わせても、食用犬の飼育農家、犬肉の処理・流通業者、犬肉専門店への「生業補償」は、まだ検討すらされていない。何よりも、法律で規制したところで…という国情がある。 (ジャーナリスト・室谷克実)
夕刊フジ
https://www.zakzak.co.jp/article/20231116-4U2O3KIZKNLMVOUIX4JWRWHV2Y/