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西武・山川穂高が減額提示蹴って逆風のFA宣言 浅村栄斗超え〝史上最大のヒール〟誕生へ
超異例のFA宣言だ。去就が注目されていた西武・山川穂高内野手(31)が申請期限の14日に国内FA権を行使した。山川本人は今回の決断は移籍を前提とするものではないとしているが、水面下ではソフトバンクがアタックに向けて準備を進めている。自身が引き起こした不祥事の処分が解けないまま退団&移籍となれば、西武史上最大の〝ヒール〟が誕生することは間違いなく、希代のバットマンは逆風だけが吹き荒れるFA市場へ飛び出す。
「全て今度話します」。今月1日に報道陣の前でそう話して以来、球団施設にパッタリと姿を見せなくなった山川は会見などではなく、球団発表による長文のメールでFA宣言する意思を示した。
その中で山川は「皆さまに不快な気持ち、不信感を生んでしまった一連の出来事を通じて、野球だけではなく、社会から離れることまでも考えました。それでも私の心から消えずに残り続けたことは野球がやりたい、野球をさせていただきたいという答えでした」とし「ライオンズにい続けることがファンの皆さま、球団の皆さまに対する感謝の形、謝罪の形、誠意であるということも考えています」と言及。その上で「同時にFA宣言が持つ、選手の権利として定められた制度という理解を超え、これまで聞くことがなかった声をお聞かせいただくことで、自分自身を戒めることとなるのではないかとも考えました」と宣言に至る経緯を説明した。
最後は「FA宣言により西武ライオンズ以外の球団の考えを聞いた上で、残留か移籍の判断をさせていただくことは、新たな野球人生へと歩ませていただきたいという私の一方的な願い、自分本位な意思のように聞こえてしまうであろうことも重々承知しております」と受け止めつつ「私が宣言させていただくことで何より私自身のこれからの野球人生に対して、重い責任を持ち続けることの覚悟であることを、どうか少しでもご理解いただけたら幸いです」とファンにも理解を求めた。
ただ、不起訴になったとはいえ、国内FA権を取得した年に女性絡みの不祥事を起こし、球団から受けた「無期限の公式戦出場停止処分」も解除されていない。まさに異例のFA宣言だ。
球団側は今季推定年俸2億7000万円から減額制限いっぱいとなる40%減の「1億6200円プラス出来高」とみられる単年契約を提示。山川サイドに残留要請を行ってきた。
その一方で、山川はこの2週間、雲隠れしたまま最終的に代理人を通じて必要書類を提出。どれだけ謙虚な文面で反省の色をにじませても、減俸提示を受け入れがたかったと考えるのが自然。権利を行使した以上、山川が「残留」を選択するとは考えにくい。
ネット上にはさっそく「もう出て行ってもらって結構」「自分の不祥事で球団に迷惑をかけ泥を塗り出て行く。権利なのでそれでいいと思う」など、西武ファンからの辛らつな言葉があふれている。また、かねて水面下での調査を続けるソフトバンクのファンからも「お願いだから球団は獲得に動かないで」と〝山川拒否〟のコメントまで記されている。
行くも地獄、残るも地獄…。山川には逆風しか吹いていない状況だが、西武の球団周辺では「もし山川がソフトバンクのユニホームを着て西武(ベルーナ)ドームに帰ってきたら浅村以上の〝ヒール〟になることは間違いない」と予想されている。
西武が辻政権下でリーグ制覇を成し遂げた2018年、山川とクリーンアップを組んで打点王に輝いた浅村栄斗は同年オフにFA宣言。当初は浅村も「外に出るから行使ということではなく、他球団の評価を率直に聞きたいと思った。ライオンズを最優先で考えたい」と移籍を前提にしないことを強調していた。しかし、結果的には楽天側に用意された年俸7億円の4年契約ともいわれる超大型契約で電撃移籍。移籍1年目の西武戦ではライオンズファンから〝憎悪〟に満ちたブーイングを浴びせられた。
当時の辻監督は「浅村がそれだけファンに愛されていたことの裏返し」と前主将をフォローしていたが、それだけファンはひいきのチームや選手に強く感情移入する。そうした光景を一塁キャンバスから見ていた山川も、浅村の立場を自分に置き換えて想像もしたはずだ。
処分が解除されないまま、批判も逆風も覚悟の上でFA市場に身を投じた山川。今後がますます注目される。