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阪神・岡田監督に届けられていた「暗黒時代」の〝暴露本〟オファー
阪神・岡田彰布監督(65)は2022年オフ、矢野燿大監督(54)の後を受けてタイガースの監督に就任した。08年以来、実に15年の時を経て虎の指揮官に返り咲いた。10年から12年はオリックスを率いてはいたが、監督という職からは10年以上も遠ざかっていた。
もう、タテジマを身にまとい若虎たちを率いることはないのか。22年の時点で65歳となる評論家・岡田氏がそう思うことがあったとしても不思議ではない。22年1月31日、矢野前監督が退任宣言をした後、数々の次期監督候補の名が各メディアに挙がった。岡田氏の名ももちろんノミネートされていたものの今岡真訪、藤川球児、鳥谷敬ら若い世代を推す声も多く、全く不透明だった。
そんなさなか、22年の春先に某出版社から評論家・岡田氏に思わぬオファーが舞い込んだ。チームは低迷とまでは言えないまでも17シーズン連続でV逸。タイトルや内容は阪神が優勝できない原因を掘り下げる「暗黒時代の再来」を思わせるものだった。
球団OB、元監督として超辛口の評論を展開していた岡田氏。虎の表も裏も知り尽くした元指揮官に白羽の矢が立ったのは理解できる。思い切り〝暴露〟してしまう選択肢もあったかもしれない。だが、虎の申し子・岡田彰布はオファーを受け流した。
これまで幾度となく虎の次期監督候補に「岡田」の名が挙がってきた。それでも実現することはなかった。「阪神から監督へのオファーがあれば?」と何度も同じ質問を受けてきたが「自分がやりたい言うたかて、こればっかりは自分では決められんからな」と返答し続けた。内心では半分、諦めかけていたのかもしれない。それでも気持ちを切らすことはなかった。
「とにかくね、ファン目線で野球を見始めたらもうアカンのよ。タイミングもあるやろし、そういう(監督をしたいという)気持ちを持っとかなあかん。(監督就任への)意思がなかったら、ええ加減に野球を見てしまうもんな」
幼少期から虎党であり続け、虎戦士であり虎の将でもある岡田彰布。そんな男を虎の神様が見放すはずがなかった。いや、岡田彰布が虎を見放さなかったというほうが正しいかもしれない。
貫いた虎への愛が岡田彰布を2度目の阪神監督就任へ導いた。そして虎戦士として、虎の指揮官として、阪神の日本一を経験した世界一幸せな唯一無二の虎党となった。虎の「暗黒時代」を執筆するどころか「黄金時代」への礎を築いた名将に脱帽だ。