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阪神38年ぶり日本一で…「なぜタイガースファンは道頓堀川に飛び込むのか?」背景に「東京への対抗心」精神科医が徹底分析
38年ぶりとなる日本一に阪神タイガースが辿り着いたのは11月5日のことである。日本一が決まるや試合が行なわれた京セラドーム大阪の左翼席からは応援歌である『六甲おろし』が地鳴りのように鳴り響き、ファンは喜びを爆発させた。
そんな中、厳戒態勢が敷かれたのは大阪随一の繁華街・ミナミに位置する道頓堀川。優勝が決まった第7戦が行なわれた5日には、ミナミの中心に位置する戎橋(えびすばし)の周辺に1300人ほどの警察官が配備され、橋の上は一方通行状態に。吉村洋文府知事(48)も試合前にはX(旧ツイッター)で、
《今日、日本一が決まります。どんな結果でも道頓堀川には飛び込まないようお願いします。危険です。過去には死亡事例も出てます。周りに迷惑をかけない形で喜びを分かち合いましょう。》
と、投稿。府民に安全を守るよう呼びかけた。
■過去には死者も……それでも阪神ファンが飛び込むワケ
ワイドショー関係者が明かす。
「阪神タイガース優勝時の風物詩とも化している“道頓堀ダイブ”ですが、2003年のリーグ優勝時には5300人以上が飛び込み、死亡者も1名出ています。
死者こそ出ませんでしたが、05年のリーグ優勝、9年ぶりとなる日本シリーズ進出を決めた14年巨人を相手にクライマックスシリーズを突破した時も“道頓堀ダイブ”は見られました。道頓堀川の水深は、平均して3.5メートルと溺れる危険も十分。
近年、浄化が進んでいるとは言え、川には大腸菌も生息している。川の水を飲んでしまえば、お腹を壊すリスクもあります。吉村知事が警戒を呼びかけるのも当然です」
厳戒態勢の甲斐もあってか、阪神タイガースが優勝を決めた直後に道頓堀川へと飛び込んだのは37人のみ。一大事へとつながる事故もなかったわけだが、それにしても、タイガースファンはなぜ、道頓堀川へと飛び込みたがるのか――。大阪在住の精神科医の片田珠美医師によると、「タイガースファン特有の心理が関係している」と指摘する。
「日本一になったのも38年ぶりで2回目。長きに渡る低迷から“ダメ虎”とも呼ばれました」
現に1987年から01年にかけては15シーズン中10回も最下位に沈んでいる。それでも応援し続けるのは、ファンが負けっぱなしのタイガースに自身の人生を重ね合わせているからでは? と、片田さんは指摘する。
「負けっぱなしの阪神を見て、自身の人生と重ね合わせている人が少なくないのだと思います。これを精神分析では同一化と言います」
自分の人生でいつかは成功したいという気持ちを、負け続ける阪神タイガースの惨状に重ね合わせていたファンは、タイガースが優勝すると“いつかは俺も”という気持ちを抱くのだという。
「いつかは自分もタイガースのように飛び立ちたい。負けっぱなしの人生から脱却したいという想いが道頓堀川へのダイブにつながるのではないでしょうか」(前同)
■大阪経済界の地盤沈下が影響……関西人は注目を浴びたい⁉
川は世の中に数多ある。それでは、なぜ、タイガースファンは道頓堀川をダイブの場所へと選ぶのか。
「注目を浴びたい。優勝してヒーローになったタイガースのようになりたいという自己顕示欲があるのだと思います。道頓堀川は汚いことで有名ですが、大阪の繁華街のど真ん中にあり耳目を集めやすい。そこに飛び込むことで注目を浴びたいのでしょう」(前出の片田医師)
なぜ、関西人は注目を浴びたがるのか。その背景には大阪経済界の地盤沈下が影響しているのではと、片田氏は分析する。
「大阪は昔から東京と並んで二大都市との自負があったはず。現に日本の高度経済成長期を支えた電機メーカーも数多存在しました。しかし、16年にはシャープが台湾企業である鴻海精密工業に買収されていますし、パナソニックにもかつての勢いはありません。
当然、経済界を支えてきた大手企業が傾けば、下請け企業にもその影響は及びます。人口も大阪市と比べて横浜市の方が多いですし、かつての勢いはありません」
太閤殿下・豊臣秀吉が作り上げた商人の街として大阪が栄えたのも今は昔。冷え込む経済状況が“いつかは大阪だって”という気持ちにつながるのだという。
「巨人V S阪神は伝統の一戦として人気がありますが、それだって東京V S大阪の対抗心の表れです。東京に勝ちたい、注目を浴びたいという気持ちも道頓堀川へとダイブするタイガースファンの心理に影響しているでしょうね」(前同)
タイガースファンが道頓堀川へとダイブする背景には、様々な事情があるというわけだ。