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阪神4番・大山悠輔が明かした佐藤輝明への願い 「ミスタータイガースはテルであるべき」「これからはテルがメインでやっていくべき」
【阪神】4番大山悠輔が明かした後輩佐藤輝明への願い「ミスタータイガースはテルであるべき」
ミスタータイガースの称号はテルに-。阪神大山悠輔内野手(28)の進化を追う日刊スポーツ独自企画「比べるのは昨日の自分」。
今回は日本一特別版としてかつての恩師でもある広島新井2軍打撃コーチへの感謝、そして後輩佐藤輝明内野手への本心を赤裸々に明かした。虎生え抜きでは85年掛布雅之以来の「日本シリーズまで全試合4番」を達成した主砲の本音とは…。
大山は日本シリーズ開幕の直前、偶然にも恩師と“再会”を果たしていた。
「この前、YouTubeを見ていたら良太さんのインタビューをやっていて、その内容が良太さんらしいなって思いました」
カープOBの安部友裕氏が由宇球場で広島新井良太2軍打撃コーチに突撃した番組。昨季まで阪神で師事した兄貴分の言葉に、あらためて気を引き締めた。
「良太さんは技術だけでなく姿勢も大事にされる。その番組でも『投ゴロでもしっかり走れ』『走る姿に自分の心や資質が出る』『打てなかった時、エラーした後に本質が出る』と。良太さんが大事にしている“走姿顕心”という言葉…。座右の銘にしてもいいかもしれませんね」
20年から3年間1軍で指導を受けたコーチは昨季限りで阪神を退団した。全体練習前の室内打撃練習から付きっきりで指導してくれた恩師の不在は今季、4番の不安材料の1つだった。
「去年までなら良太さんに『どうでしたか?』と聞けた。客観的な声を聞いて、自分の感覚とのすり合わせをできた。今年はそれができない難しさがありました。自分で映像を見て、イメージとのズレを確認するしかなかった。でも、今考えればいい1年になったかもしれません。いつまでも良太さんに頼りっぱなしではいけない。いつかは自分1人でやらないといけないことだったので」
状態が下降した時期は室内練習場にこもり、ネットに仕切られて両幅たった数メートルの空間で新井コーチ直伝の打開法に取り組んだ。
「ピッチングマシンが設置されている、狭く縦長に仕切られた場所で誰かに投げてもらうんです。少しでも左右に打つとネットに当たってしまうところを、ネットに当てず中に通すイメージ。そうすれば体がキュッと回るようになるので」
大山は23年、恩師の教えをベースに心身ともに独り立ちを図った。“走姿顕心”も貫き、そんな姿勢はいつしか虎の指針となった。「なあ、悠輔がそんな態度を見せるか?」。周囲から諭された後輩たちは次々に心の成長を遂げた。
今秋、4番は静かに喜びを口にしていた。
「テル、投手への声かけとか頑張っていますよね。自分がマウンドに行こうとしたら、先に行ってくれていることも多い。僕の方ができていないぐらいです。個人的には3年目でもまだ自分のことだけをやってもらいたい。僕は先輩方にそうさせてもらってきたので。でも輝は変わりました。若い投手が増えたのもあるけど、このままではダメだと自分で気付いた部分もあったと思うんです」
プロ3年目を迎えた佐藤輝は6月下旬、2軍降格を経験した。岡田監督ら首脳陣が試合中の態度などに疑問を感じた末の決断だった。大砲は7月上旬に1軍復帰すると、今まで以上に仲間に言葉をかけるようになった。先輩は後輩のそんな変化がうれしかった。
「これからのタイガースはテルがメインでやっていくべきだと思うんです。地元の兵庫県西宮市出身で華もある。試合前に球場で流れる各球団の紹介動画でも、テルが『ミスタータイガース』と呼ばれているじゃないですか。チームの顔であり続けるのは大変なこと。あとは本人がどれだけ頑張れるか。もちろん自分だって『負けたくねーぞ』という気持ちはあるし、陰ながら頑張りますけどね」
日本シリーズ。大山は投ゴロでも全力疾走を貫いた。佐藤輝は失策して三振して途中交代させられても、ベンチの最前列から声をからしていた。「虎の主砲」としての生き様は未来へ、脈々と受け継がれていく。