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「高くてつまらない」不満噴出の台湾観光、専門家が指摘する4つの「致命傷」
▽ 不便な交通 歩行や移動のしにくさに課題
静宜大学観光事業学科の黄正聰副教授(准教授)は、個人旅行の割合が高まる一方で、交通の利便性が高いのは台北地域のみで、中部や南部は個人旅行の難易度が高いと指摘する。台湾高速鉄道(高鉄、新幹線)や台湾鉄路管理局(台鉄)の駅や高速バスのターミナルもそれぞれ独立しているため、交通の集約においても日本とは落差があると問題点を挙げる。
レジャー産業に従事する王彦荏さんは、交通面の対応が十分に行われていない例として、東部・台東県鹿野で今夏行われた台湾国際バルーンフェスティバル(台湾国際熱気球嘉年華)を挙げる。約2カ月の会期中、延べ100万人を超える観光客が訪れたものの、シャトルバスが著しく不足していたという。「台湾の観光は車での移動に依存しすぎている」と王さんは語る。都市部でも歩道がバイクや障害物で塞がれていることによって、スーツケースを引く観光客が車道を歩かなければならない状況が発生しているとし、安全面での懸念も示した。
▽ 代わり映えのしない観光地 地域ならではの魅力が不足
インターネット上では「北から南まで、台湾の老街(古い町並み)や夜市はどこでも同じものを売っている」との声も聞かれる。与党・民進党の林俊憲立法委員(国会議員)はかつて「台湾の観光スポットにはスカイウオーク(つり橋、空中展望台)かアート村しかない」と苦言を呈した。林氏によれば、2015年から18年ごろまでのわずか3年間に、台湾には新たに80カ所のアート村と13基のスカイウオークが建設された。各地の観光地の類似性の高さから、台湾の観光業にはハード面を整備する予算はあっても、包括的な計画やソフト面における価値の付与が欠如していることがうかがえる。
魅力的なスポットがあっても、それを生かし切れていないことが課題の一つだと指摘する意見もある。ホテル大手、シルクス・ホテル・グループ(晶華国際酒店集団)の潘思亮董事長(会長)は以前、台北のナイトライフは活気があるものの、現地人でなければどこから楽しめば分からないと発言したことがある。潘氏は、台北市内の遊園地、児童新楽園や台北パフォーミングアーツセンター(台北表演芸術中心)、博物館などで夜間開放を企画するなどし、夜間の台北観光をより魅力あるものにする必要があると提言する。
▽ 長期目線の欠如 一時しのぎの計画に終始
匿名の地方政府職員は、台湾の一部の観光業者や店舗は短期目線での利益にばかり目を向け、長期目線での投資や経営をしたがらないと明かす。建設計画によって商売に一時的な影響が出ることも嫌がるため、フレンドリーな観光に向けた交通インフラの建設の推進は容易ではなく、台湾観光の進化において障壁となっている。
不動産サービス大手、コリアーズ台湾(高力国際)の董事(役員)の一人である黄舒衛氏は取材に対し、台湾の観光産業が参考にしうるビジネスモデルとして、日本の鉄道会社を例に出す。日本の多くの鉄道会社が不動産事業も同時に手掛け、ホテルや百貨店の開発を一体的に行っていることに触れ、良好な立地を確保できるだけでなく、コストの削減にもつながっているとメリットを指摘した。
▽ 深刻な人手不足 需要が供給に追いつかず
台湾のインターネット掲示板では最近、一部のホテルが「チェックインを午後5時、チェックアウトを翌日午前11時」としていることに不満を漏らす投稿がなされ、物議を醸した。この背景には深刻な人手不足がある。
あるホテルの幹部は「若者は配達員やインフルエンサーにはなっても、ホテルには働きに来ない」と嘆く。給与を引き上げ、清掃手当を出しても、人は集まらないという。
潘氏は「予約はいっぱいなのに人手が足りない」と話す。外国人人材の受け入れ加速を望む考えを示し、政府は日本のやり方を参考にできるのではないかと呼びかける。
(略)
(江明晏/編集:名切千絵)
https://news.yahoo.co.jp/articles/86bf294fe08b8d3c2c1a329c425c1910f9e6f4fc