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【北の脅威】 リアルに感じている韓国 前任者とは180度違う尹政権 国民支持が後押し「統一省なんて、潰してしまえ」
南北対話・交流協力部門を「南北関係管理団」に統廃合した。
その一方で、北朝鮮関連の情報を収集分析する機能や、韓国人拉致問題対策は強化。拉致被害者対策の担当組織を新設した。
北朝鮮への圧力を重視する尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、統一省がこれまで
「北朝鮮支援省」の役割を果たしてきたと批判して改革を要求していた。
尹大統領は6日、インドネシアのジャカルタで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議で、
「国際社会の平和を害する北朝鮮との軍事協力の試みは直ちに中断しなければならない」と強調していた。
尹さんは文在寅(ムン・ジェイン)前政権で検察総長を務めていたが、前任者とは180度違う方向に進んでいる。
文前大統領は、簡単にいうと、「北朝鮮と一緒になることが韓国の幸せだ」というのが身上。
2045年には南北統一を目指すという構想も発表し、北朝鮮への融和政策を進めた。
2018年に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との間で開城(ケソン)工業団地や
金剛山(クムガンサン)観光の正常化、離散家族問題の解決に向けた人道的協力の強化などで合意した。
しかし、その後は金総書記には無視され続け、今度は米国のドナルド・トランプ大統領(当時)にくっついて、一緒に北と交渉した。
しかし、米朝会談が決裂すると、北は韓国との交流・協力を中断、
20年6月には南北交流の象徴的事業だった南北共同連絡事務所を爆破した。
それでも日本から見ていると、韓国の国民は北と一緒になるという考えを基本的には支持していると思っていた。
ところが、実は国民の考えは、南北統一よりも北朝鮮の核ミサイルに対する脅威の方が強いことが判明した。
韓国統一省傘下の統一研究院がこの6月に行った世論調査でも、
「北朝鮮が核を放棄しないなら、韓国も核兵器を保有すべき」に60・2%が賛成。
北朝鮮の脅威に対応するため日本と軍事同盟を結ぶことには52・4%が賛成していた。
今回、尹さんが、極端に言うと「統一省なんて、もう潰してしまえ」という主張ができるのも、支持している人が多いからだ。
少なくとも、韓国の中道左派に位置するリベラル野党の「共に民主党」より支持されている。
まあ、このことは日本からはわかりにくいところがあった。韓国の人たちに対しては、正直に自分たちの考えを言ってよと言いたくなる。
ま、そこまで国民の意見を動かすのに、尹さんは成功したのだろう。
北朝鮮は大量破壊兵器を持っている。各種弾道ミサイルに核兵器もある。
今度は戦術核攻撃潜水艦を進水させ、戦術核兵器を積むことができるようになったといわれる。さらには化学兵器、生物兵器…。
そして金総書記はロシアのウラジーミル・プーチン大統領とウラジオストクで直接会って武器供与を巡る交渉を積極的に進めている。
ということで、韓国の国民は「北に対する防御を完璧にしろ」「日本、米国との軍事同盟を強化していけ」と対北朝鮮融和路線を転換することを望んでいる。やっぱり北の脅威はリアルに感じているのだなと思った。
大前研一
夕刊フジ 2023.9/17 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20230917-5IZBGET3KZP7NJWETDRNXEMSCI/