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なぜインド発祥の「カレー」は日本で独自進化遂げた? 名付け親は誰? いまや「日本の国民食」となった背景とは
2023年9月9日に開幕した主要20か国首脳会議(G20)では、インドが初の議長国としてリーダーシップを発揮しています。そのなかで、国名を「インディア」から「バーラト」に変更するなど大きな話題を呼びましたが、2023年に世界最大の人口を持つ国となったインドは、今後国際社会においてさらなる影響力を持っていくことが期待されています。
そんなインドに対して、多くの日本人がイメージするものが「カレー」です。日本の国民食ともいえるカレーが、インドに由来するものであることは多くの人に知られています。
ただ、日本のカレーとインドのカレーは、よく似ているようにも見える一方で、別の食べ物のようでもあります。
それぞれのカレーは、本当に同じものなのでしょうか?
さまざまなスパイスの効いたインドカレー
「カレー」は、インドで使用されているタミル語の「カリ」もしくは「カリル」が語源とされています。
しかし、インドには本来「カレー」という食べ物はなく、「カリ」や「カリル」もそれぞれ「スープの具」や「香辛料を用いた炒めもの」といった意味の言葉です。
もちろん、インドには「複数の香辛料を用いた煮込み料理」自体は多く存在しています。ただ、それらにはそれぞれ固有の料理名があり、総称して「カレー」と呼ぶことはありません。
「カレー」という言葉が広まったのは、インドを支配下に置いていたヨーロッパ諸国によるところが大きいようです。
インドとヨーロッパの交易が盛んに行われるようになった16世紀以降、インドから帰ったヨーロッパへと帰った人々が「複数の香辛料を用いた煮込み料理」を総称して「カレー(Curry)」と呼んだことで、カレーがヨーロッパ各地へと広まっていったといわれています。
特にイギリスでは、カレーは高級料理として進化を遂げており、現在でも歴史ある高級ホテルなどで食べることのできるカレーは、ここに由来しています。
また、小麦粉を用いてルウにとろみをつけるようになったことや、数種類のスパイスがあらかじめブレンドされた「カレー粉」もイギリスが発祥のようです。
日本に「カレー」が伝来したのは1860年頃とされています。
近代化に向けて西洋の文化を積極的に採り入れていた当時の日本には、さまざまな西洋料理が伝来しており、「カレー」もそのなかのひとつであったと考えられています。
つまり、日本のカレーはインドから直接輸入されたものではなく、ヨーロッパ、特にイギリスを介して輸入されたものということ。しかし、日本に渡った「カレー」は独自の進化を遂げることになります。
当初は高級西洋料理という印象の強い「カレー」でしたが、栄養バランスや調理しやすさなどから陸軍や海軍の食事として採用されるようになったことで、多くの人々に知られるようにりました。
当時の人々にとって「カレー」は西洋の香りがするおしゃれな食べ物であった一方で、煮込み料理の一種であることや米と一緒に供されることなど、日本人にも馴染みやすい要素が多かったことが人気の一因となったようです。
その後、「カツカレー」や「カレーパン」、「カレーうどん」といった派生メニューが登場したことや、誰でも手軽においしいカレーが食べられる「レトルトカレー」が登場したことで、日本のカレーは国民食としての立場を固めていくことになります。近年では北海道を中心とした「スープカレー」も流行するなど、もはや「魔改造」と言っていいほど、日本は独自のカレー文化を築き上げています。
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このように、「カレー」のルーツがインドにあることは疑いようのない事実ですが、日本のカレーはインドのカレー(にあたる料理)とまったく別の過程で進化を遂げています。
実際、日本のカレーは日本独自の料理としてインドを含む世界各地へと広まっており、インドのカレーとは別のものとして受け入れられています。
このように考えると、日本のカレーはもはやれっきとした「日本料理」と言ってよいのかもしれません。
Peacock Blue K.K.
https://news.yahoo.co.jp/articles/01f558aebebe4a363bdb4a54fa395e788b982fbc