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通勤手当が課税される日は本当にくる? サラリーマン増税報道の過熱で政府は「火消し」
(出典:弁護士ドットコムニュース) |
1 蚤の市 ★ :2023/08/29(火) 06:28:53.69 ID:scVMMrBL9
◆「相当手厚い」控除に目付け
有識者らによる政府税調は6月30日、中期答申をまとめた。その中で退職金に課せられる所得税の控除見直しについて「退職金の支給形態や労働市場の動向に応じて税制上も対応を検討する必要が生じている」と指摘した。
現行は退職金から控除額を引いた金額の2分の1に、所得税と住民税が課せられる。控除額は、勤続年数が20年を超えると1年当たり40万円から70万円に拡大。仮に、控除額が少なくなると増税となる。
「主要国との比較で相当手厚い仕組み」と指摘を受けたのは、給与所得にかけられる控除だ。サラリーマンは原則、確定申告をしないため3割程度を経費とみなし、経費を引いた金額に税金が課せられる。答申では、実際の経費は約3%という試算があると指摘。この指摘に沿って、控除割合が減ると負担増だ。
現行では非課税対象となっているさまざまな会社からの支給も、税制のありかたについて「検討」となった。答申に列挙されたのは、社宅の貸与、残業時の夜食支給、自社製品の値引き販売、通勤手当、雇用保険上の失業等給付などだ。
◆「骨太の方針」に盛り込まれている退職金増税
この答申について、批判はなかなかやみそうもない。ネット上で「サラリーマン増税」という批判が拡大。首相が7月下旬、官邸で自民党税調の宮沢洋一会長に「増税は全く考えていない」と述べ、火消しに走る異例の事態に。その後も、「これだけ増税されたら生活していけない」「増税しても結局、議員の視察という名の海外旅行資金になってしまう」といった意見が並んだ。
政府税調の答申について、財務省は「中長期的な税制のあるべき姿を提言した」と説明する。税制の変更は政府税調でなく、有力議員らによる与党税制調査会が決める慣例が続いているため、今回挙げられた多くの項目については今秋に始まる2024年度税制改正の議題には上らない見通し。しかし、退職金増税は、成長分野へ労働力を移動させたい岸田政権が「骨太の方針」に盛り込んでおり、今年の年末にかけ議論される可能性が残っている。
政府税制調査会と与党税制調査会 「政府税制調査会」は学者や経済人らで構成する首相の諮問機関。経済や社会の変化に対応し、中長期的な視点で税制の在り方を検討する。答申に法的拘束力はない。年度ごとの税制を具体的に決めるのは自民、公明両党の「与党税制調査会」。有力議員らが年末に議論、関係省庁や業界団体の利害を調整し、税目や方式などの制度設計を行い、税制改正大綱にまとめる。
◆問題は、答申の中身より意思決定の仕方
慶応大の井手英策教授(財政社会学)の話 日本の会社員は源泉徴収を基本としているため、給与所得控除は政治的に決断しづらく甘めになりがちだ。年金でも現役の時に社会保険料が給与から控除され、受給時にも所得控除を受けるため、二重控除になると指摘されてきた。退職金は、出さない企業が2割ほどある他、就労者の4割相当の非正規労働者の多くがもらっていない現状がある。
控除の扱いも、退職金の扱いも議論してよい。多くが長年、指摘された理論的な課題だ。「サラリーマン増税」と騒がれたが、政府税調の答申では、所得が1億円を超す層への課税や相続税の強化など、再分配強化策も重点的に議論されている。
問題は、答申の中身より意思決定の仕方だ。2022年の参院選では、防衛費増額や少子化対策が強調されたが、与野党ともに必要な財源を掲げなかった。選挙後に突然、増税論がわけば、違和感を覚えるのは当然だ。
財務省は財源の提示を迫られたが、消費税増税や所得税率の引き上げは、インパクトが大きすぎる。その結果、財源の足しになりそうで、政治的反発の小さなところを標的にした。だが支持率の低い政府は、それも否定した。
ばらまきとならないよう、給付と負担をセットにした選択肢を示し選挙を戦う。そんな当たり前の政治を実現する方策を、国民もメディアも本気で考えなければならない。
東京新聞 2023年8月29日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/273280