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課題は「入試で数学をどこまで課すか?」…政府が支援する「大学の理系学部の新設」
「食農科学部」や「情報社会学部」
支援事業は、理系学部などの新設と大学院の定員増などが柱となっている。学部などの新設は、各大学からの申請に基づき67校が選定された。
このうち女子大では、日本女子大「建築デザイン学部建築デザイン学科」、大妻女子大「データサイエンス学部」、椙山女学園大「情報社会学部」、武庫川女子大「環境共生学部」、京都光華女子大「食品生命科学科」、安田女子大「理工学部生物科学科、情報学科、建築学科」、などが選ばれた。
毎日新聞によると、日本では理系人材が、海外の先進国に比べて少ない。このため政府は、理系学生の比率を現在の35%から、2032年には50%程度に引き上げることを目標に、約3000億円の基金を設け、理系教育の強化を促すことを決めていた。1件につき最大20憶円程度の支援が受けられる。
これから学部の設置に向けて進む大学が多いが、実現についてはいくつかのハードルも指摘されている。
高校で数学をしっかり学ばないと
一つは教員の確保。日経新聞によると、学部新設認可を受けるには教員数などの審査をクリアする必要がある。ところが、担当できる教員が不足している大学が少なくないという。
もう一つは「数学」。理系には必須とされている。
新設を目指す学部には、デジタル時代を反映し、「情報」「データサイエンス」関係が目立つ。朝日新聞は22年11月26日、「データサイエンス系学部学科が続々誕生 就職好調 数学は必須?」という記事で問題点を指摘している。
たとえば、文系大学の一橋大は、すでにソーシャル・データサイエンス学部を新設。入試前期日程の2次試験の配点は、数学330点、英語230点、国語100点、総合問題100点と、数学の比重がきわめて重くなっている。
記事の中で、河合塾教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんは、「問題は、データサイエンスなどに必須の数学を入試でどこまで課すかです。元々文系の大学や学部で数学を入れれば、学生が集まりにくくなる。一方で、高校で数学をしっかり学ばないと、入学後に授業についていけず、大学、学生の双方にとってよくありません」と語り、数学の扱いが理系拡充の難題となりかねない一面を指摘している。