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阪神近本、お気持ち表明
復帰してから15試合連続安打や24試合連続出塁などを記録して、数字上では好調のように思われるかもしれませんが、実はあまり調子がいいとは思っていません。僕にとって調子がいい時というのは、イメージ通りの打球が打てるんです。こういうヒットを打つ、こういう打球を打つ。そのイメージ通りにボールが飛んでいくのですが、今は決してそうではないんです。
たとえヒットになっても、イメージのど真ん中から少し外れたような打球が多くて、しっくりきていません。だからヒットが出ているという結果が精神的な安心材料にはなっていなくて、毎日必死に食らいついているという感じです。でも「調子がいい」ということが良いことだとも思っていません。
調子が良くなくてもヒットが出ている、フォアボールが取れているのでそれでいいと思っています。これからの戦いは自分のバッティング内容よりチームの勝ち負けが最優先なので、今はそれを求めています。調子が悪くてもチームが勝てばいいのですから。
最近のバッティングでは「骨で打つ」ことを意識しています。今までは筋肉を使っていましたが、骨をうまく使ってボールを捉えるという感覚です。「コツをつかむ」という言葉がありますが、「コツ」というのは漢字で書くと「骨」と書きます。だから骨をうまく使えるようになったということが「コツをつかむ」ということなんです。
左腕の前腕で言うと、2本ある骨のうち、橈骨(とうこつ、前腕の親指側にあって尺骨と平行の骨)から入って腕を返しながらボールを捉えるような意識です。ただ、打撃の成績がいいから「コツをつかんだ」かと言えば、そうではありません。「骨で打つ」ということは難し過ぎて、打てるイメージがつかめていないんです。だから、こうすれば打てるんだなっていう「コツ」はまだないんです。
でも、先ほども言いましたが今はそれでいいんです。どんな打ち方でも、打てるイメージがなくても、ヒットが出ればいいです。ヒットの確率が高い打ち方よりも低い打ち方でもいいから、結果的に打率が高ければいい。打率が高いということはヒットが打てている。それはイコール、チームに貢献できているということです。どれだけ自分が求めるものがあったとしても、今はそこじゃないかなと思っています。
確かにウエートトレーニングをやって筋肉が大きくなるとボールは飛びますが、筋肉がメインになると疲労がたまりやすいし、ケガのリスクもあります。でも骨をうまく使ってあげると、骨に付随する筋肉がうまくサポートしてくれるので、骨を先に意識するべきなんです。
この考え方自体は大学時代からあったのですが、今回ケガをした期間に改めて気付けました。どれだけいいアライメント(関節や骨の並び)で正しい位置で体を動かせるか。ケガの前に不調だったのは、それを筋肉でやろうとしていた部分もあったからだったんです。例えば腕を曲げるとしても、前腕二頭筋を意識して曲げるのか、前腕骨と上腕骨を意識して曲げるのか、それだけでも動きが違ってくるんです。筋肉でボールを捉えるとか、筋肉で片足を上げるとかではなくて、やっぱり骨でつかむ、骨で立つことが大切だということです。
もしかしたら骨折をしなくても気付けたかもしれませんが、でも結果的に骨折をしたことで気付けたので、ケガも含めてプラスに捉えるようにしています。ケガを何かのせいにしたところでマイナスのイメージにしかなりません。僕はもう、ケガがあって良かったとしか思っていません。あのケガがあったから考えを整理できたり、やりたいことをできる時間があったんです。だから僕は「離脱」という感じではなく、ただの「休養」だったと解釈しています。
夏場の厳しい暑さが続いていますが、3週間ほど野球の試合から離れたことで、疲れはそれほどでもありません。ずっと休みなく、スタメンで出続けている中野(拓夢)や(大山)悠輔はしんどいと思います。1試合でもスタメンを外れると、体は全然楽になりますから。試合に出ない時の方が野球のことをより考えるようになるのですが、それでも体はもちろん、気持ちも楽になります。今回のケガは自分が原因ではなく不可抗力だったので、ケガを理由に周りの評価が下がるわけでもありませんし、成績を気にしなくていいというのは、やはりすごく楽でした。
人間が出来てるな