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小学校教諭の7割「平和学習が困難」 その理由は…
アンケートは7月、日本新聞協会が教育現場で新聞を活用する「NIE(教育に新聞を)」の実践校として2023年度に指定した全国の小学校130校を対象に質問票を配布。各校の平和学習を担当する教諭111人から回答を得た。
「78年前の原爆や戦火の記憶に関する平和学習を展開する上で、困難に感じることはあるか」との質問には「ある」が21人、「どちらかと言えばある」が56人だった。困難が「ない」「どちらかと言えばない」は合わせて34人だった。「困難」の理由を選択肢で選んでもらったところ(複数回答)、「授業時間が少なく時間をかけて教えることができない」(39人)が最も多かった。
平和学習について、国の学習指導要領には明記されておらず、取り組みは学校の裁量に委ねられている。小学校では「総合的な学習の時間」や国語・社会などの教科学習、修学旅行などの教科外学習で取り組むが、地域によって差もあり、回答から授業設定が難しい現状が浮かび上がった。
困難な理由はこのほか、「自分自身が戦争体験者ではないため、子供に聞かれて答えるのが難しい」(32人)、「郷土の戦火や原爆に関する知識が乏しい」(31人)が多かった。自由記述では「体験者の生の声を聞かないと、当時の人の思いや願いについて学習を深める際に難しさを感じる」「子供が自分事として捉える学習がしにくい」といった声があった。
戦争体験者らを外部講師として授業に「招いている」と答えたのは23人。「招いていない」は82人に上り、理由(自由記述)では、身近に戦争体験者がいないケースが14人で最多だった。他に「新型コロナウイルスで講師を学校に招くことができなくなり、再スタートが難しい」「高齢のため今後いつまでお願いできるか不明」といった懸念も多く見られた。
広島大大学院の草原和博教授(社会科教育学)は「戦争体験者の聞き取りという授業にこだわってきたことの限界があらわになっている。子供たちがただ聞くだけでなく、既にある資料館の展示物や漫画などを使って当時をいかに記憶すべきかを議論する平和学習を考える必要がある」と話した。【竹林静、田崎春菜】
毎日新聞 2023/8/15 16:53(最終更新 8/15 18:17) 1075文字
https://mainichi.jp/articles/20230815/k00/00m/040/157000c