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【ウラル原油】 透ける習近平国家主席の野望 下落が続くロシア原油を高額購入
ロシア財政と金融を背後で支えているのは中国である。
中国の習近平共産党総書記(国家主席)は昨年2月4日、北京でロシアのプーチン大統領に対し、
「限りない友情と協力するうえで禁じられた分野はない」と約束した。以来、中国はロシアに対し、財政、金融両面で協力してきた。
この中国の行動に対し、バイデン米政権をはじめ、西側は黙認し続けている。
対露支援を代表するのはロシア産原油の国際相場を上回る価格での購入である。グラフを見よう。
油種が「ウラル原油」と呼ばれるロシア産原油は米金利高や西側の輸入制限措置を受け、昨年半ば以降、下落が続いている。
ウラル原油は成分が似ている油種である北海油田産出のブレント原油相場とはウクライナ戦争前は同水準だったが、
最近では1バレル当たり20~30ドルもウラルが安くなっている。ところが、中国の税関統計データから算出してみると、
中国はウラル原油の国際相場よりもバレル当たり16~20ドル余りも高い値段で輸入していることがわかる。
しかも輸入量は急増しており、この6月には日量256万バレルに達した。
中国と並ぶロシア原油輸入大国はインドであり、最近の輸入は日量約200万バレルである。
だが、インドの対露輸入価格はウラル原油の国際相場に沿っている。インドはちゃっかりとロシア原油を国際市況通り安く買っている。
インドに劣らず計算高い中国がインドよりも年間平均で27%も高くロシア原油を買っている。
インドはウクライナ戦争で「中立」の立場をとり、ロシアとは「友好関係」を自認している。
中国もまたウクライナ戦争に関しては「中立」の建前で、双方に対し和平仲介のそぶりをしきりに示す。
しかし、この数値が示すのは、習政権の欺瞞(ぎまん)である。実際の対露関係は北京での合意通り、盟友なのだ。
これに対し、米欧日の先進7カ国(G7)が対中制裁の気配もないというのは異様である。
ロシア原油輸入を一日当たり250万バレル、国際相場より20ドル高く買い続けた場合、
年間では182億ドル、16ドル割高の場合、146億ドルである。
ロシアのウクライナ戦費は200億ドル超とみられるが、その大半が中国による割り増し価格での輸入で賄える。
中国がインドのように国際相場を基準に購入すればプーチン氏はたちまち財政難に追い込まれ、戦争継続が困難になるだろう。
習氏がなぜこうもプーチン氏を助けるのか。ウクライナ戦争が長引けば長引くほど、ロシア経済の窮迫化が進み、
長大な国境を接する中国への依存を強め、ロシアの東部は中国の属州同然になりかねない。
それこそは習氏の野望「中華民族の偉大なる復興」の道だ。
他方、ロシアの弱体化を狙うバイデン政権とも利害は一致する。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
夕刊フジ 2023.7/28 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230728-ECBSDVCIPVMFLM6A33LZN56Z5Y/