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【室谷克実】 「南北朝鮮、中国、日本で経済共同体」韓国2位の財閥、SK会長の気宇壮大な妄言
しかし、その中核企業であるSKハイニックスは半導体不況の中で喘(あえ)いでいる。
バッテリー製造部門であるSKオンは設備拡張の資金に窮している。
SKグループの業績、資金繰りに関して、「良い話」はおよそ聞こえてこない。ところが、総帥の崔泰源氏の口は、とても軽快だ。
業績が思わしからぬ企業のトップがいろいろと話す…日本では「危ない会社・危ない経営者」と見られてしまうところだ。
崔氏は大韓商工会議所の会長も務めている。それで発言の機会も多いはずだが、普段は記事になることもない。
だが、大韓商議が主催した夏季イベントでは、思い切った発言が出た。
記者の質問に答えるかたちで、「中国の代替市場は見つけられない」「だから、中国市場を放棄できない」と。
今年1~3月期、SKハイニックスの売上高は前年同期比58・1%減の5兆881億ウォン(約5582億円)、純損失は2兆5855億ウォン(約2835億円)だった。
悲惨な数字だが、対中依存度は前年も今年も30%強だった。
設備能力の3割も、売り上げの3割も中国だ。だから、米中の葛藤が高まっても、SKは中国市場に固執するというのだ。
中国・大連に建設中の第2工場も計画通りに進めるという。
しかし、日本やオランダは、米国の対中制裁に同調しており、半導体製造のための先端設備の対中輸出を行わない。
すると、第2工場は何を製造することになるのだろうか。
夏季イベントの目玉企画は、崔氏と経済人のよるトークだった。ここで崔氏は、韓国、中国、北朝鮮による経済共同体構想を打ち上げた。
「日本も1国だけでは大変だから、ここに加わってくるだろう。すると、規模の面では欧州連合(EU)を上回ることになり…」
気宇壮大な夢想だ。
現実に立ち返れば、今年5月、国策銀行である韓国産業銀行がSKオンからの融資要請を拒絶したとの報道があった
(ソウル経済4月30日)。
無理もない。産業銀行は文在寅(ムン・ジェイン)政権の「負の遺産」をたくさん抱えている。
最大のそれは「売れば売るほど赤字が増える」構造になっている韓国電力だ。
バッテリー製造は「金食い虫」という。SKオンの黒字化計画は実現したことがない。
そこに、さらなる巨額投資をしては、産業銀行そのものの不良債権比率が顕現化する。
SKオンの最大の納入先は米フォード自動車だが、ここでも電気自動車の火災の原因究明をめぐり問題が起きた。
SKオンはその後、フォードと協調して、12兆ウォン(約1兆3165億円)の投資資金を「暫定的に確保」
(東亜日報6月24日)したとも伝えられた。
半導体では「中国様々」、バッテリーでは「米国様々」というわけだ。こんな芸当がうまくいくものだろうか。
韓国経済がどうなるか。家計負債と政府債務が大きな問題だが、対外関係では中国との貿易収支が確実な先行指標になる。
SKの動きは、先行指標の先行ニュースになり得る。(室谷克実)
夕刊フジ 2023.7/20 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230720-HWPYK4E3DZL6XMJF757HOT46W4/