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続々と使用される国立競技場はサッカー界の聖地なのか?
先週末の7月9日には町田×東京Vの東京ダービーがあり、今週末の16日には清水×千葉のオリジナル10による対戦が予定されている。加えて、8月5日には名古屋×新潟が行われるが、この一戦は28年ぶりとなる名古屋の主催となる。さらには、8月26日にはFC東京×神戸が開催される。これらはすべて、国立競技場が舞台となっている。
正直、違和感しかない。狙いは十分にわかるのである。いまだ目新しく、立地のいい国立競技場で開催することで集客が見込める。
実際、J2の東京ダービーには3万8402人が詰めかけた。Jリーグによる多大な支援(招待)があったが、この人数を町田のホームである町田GIONスタジアム(集客数1万5320人)に集めるのは物理的に不可能で、より多くの人の興味を引くという意味ではメリットがあった。ただ、同じ人数をホームスタジアムに集められない以上、一過性の盛り上がりを享受するに過ぎない。
理想論ではあるが、より大事なのは町田GIONスタジアムを毎回いかに満員にするかである。これは町田に限らず国立競技場をホームとして戦う各クラブに言えることで、たとえば東京を名乗るFC東京でもまずは味の素スタジアムを満員にすることのほうが長い目で見れば重要となる。「シーズン中のホームゲーム開催日には、なにも考えずに地元のスタジアムに行けば我らがチームが試合をやっている」。本来、各クラブがそんなふうに各地域のシンボルとして存在することをJリーグは目指しているはずである。
無論、東京一極集中となっている日本の特性は考慮しないといけない。東京は地方出身者が多く、地元のクラブが国立競技場で試合をしてくれれば足を運ぶという現実がある。個人的な出会いとなるが、最近に知り合った理学療法士が山梨県出身のサッカー好きでいまは東京に住んでおり、甲府が国立競技場で開催するACLを楽しみにしている。甲府のJITリサイクルインクスタジアムではなく、国立競技場で開催されることで容易に見に行くことができるのだと言う。もっともな話ではあるが、一方ではいつもJITリサイクルインクスタジアムで試合を楽しんでいる地元の人々にとっては一苦労な話である。
今後、国立競技場ではマンチェスター・シティ、バイエルン、パリ・サンジェルマン、インテルが来日しての試合も行われる。これだけサッカーで稼働するならやはり球技場へ変更可能な設計にしておけばと考えてしまうが、もはや後の祭り。決してサッカー界のホームスタジアムではなく、どこかのJクラブのホームスタジアムでもない。聖地かと言われれば、陸上トラックがあり、ゴール裏スタンドに割れ目があることでそうした特別な雰囲気もない。要は、“箱”としての魅了でリピーターをつかめるスタジアムではない。
そうなると、Jクラブにとっては新鮮味があるいまのうちにどんな印象を残せるかが重要だ。スピード感あるセールスでサポーターを獲得し、本来のホームスタジアムにお客さんを呼び込まなければならない。国立競技場は聖地というよりも、幅広い営業のために利用される立地のいい大きな展示場といった感じである。(フリーランスライター・飯塚健司)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c0d221fa2b30a956d2c11afaff2c060d093e3b7
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