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【韓国】残余ワクチンをアプリ予約で即接種 廃棄ゼロへ 接種の伸び悩み深刻
韓国では英アストラゼネカ製のワクチンが主流で、1瓶あたり10人の接種が可能だ。ただ開封後6時間以内に使い切る必要があり、体調不良などで急なキャンセルが出た場合は廃棄せざるを得なかった。スマートフォンのアプリを使った当日予約は、30歳以上であれば居住地域に関係なく接種を受けられる。
同国ネット大手のネイバーとカカオの地図アプリ上で、午後1時から提供を始めた。病院や診療所が残余ワクチンの情報を入力すれば、リアルタイムで公開される。利用者側は地図上で残余ワクチンを持つ医療機関を探し、住民登録番号を入力して予約する。社会課題の解決にIT(情報技術)を機動的に活用する韓国らしい取り組みといえそうだ。
韓国では、医療従事者などのワクチン接種をほぼ終えており、高齢者から対象年齢を段階的に引き下げている段階だ。27日には65歳以上の大規模接種が始まり、現時点で対象外の64歳以下も残余ワクチンは接種可能という。
当局によると、26日時点で1回目の接種を終えた人の割合は全人口の7.7%。政府は6月中に同25%に相当する1300万人分の接種を目指している。
接種率の向上に向けて課題は残る。アストラゼネカのワクチン接種を敬遠する人が多いことだ。韓国政府は防疫を重視するあまりにワクチン確保が遅れ、日本などと比べて実際の輸入量がまだ少ない。米ファイザー製ワクチンは75歳以上に限定され、多くの市民にとっては、血栓など副作用リスクがあるとされるアストラゼネカ製しか選択肢がないためだ。
25日発表の接種予約率は、65~69歳で62%にとどまる。ファイザーや米モデルナなど、今後供給が予定される別のメーカー製を待ちたいとする市民が多いという事情もある。
韓国政府は接種率の伸び悩みを打開しようと、ワクチン接種者には7月から屋外でのマスク着用義務の免除を決めた。現行の飲食店などでの5人以上の集会制限も対象外とする。そのほか国立美術館の割引適用など幅広いインセンティブを用意して接種を促している。
それでも接種希望の動きは鈍い。日本政府がアストラゼネカのワクチンについて当面の公的接種の見送りを決めたことが、韓国内でも波紋を広げている。接種を急ぐ韓国政府は、市民による接種回避という課題に直面している。
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2742B0X20C21A5000000/