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【中央日報コラム】円と人民元の戦略的通貨安、韓国経済を脅かす
3通貨いずれも対ドルで通貨安の局面だ。しかし日本円と中国人民元の劣勢はウォンをはるかにしのぐ。中国と日本は世界2位と3位の経済だ。両国とも韓国の主要輸出入相手国であり世界市場での競争相手だ。円と人民元の同時安は韓国経済としてはありがたくない状況だ。米中覇権競争と供給網再編の渦中に為替戦争の暗雲が忍び寄っている。
(略)
しかし人民元安には円とは違う要素が作用する。景気不振だ。サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、「米中の金利格差とともに中国の景気回復の遅れが人民元安の核心要因」と分析した。日本は円安が景気好調を刺激している段階ならば、中国は景気不振が人民元安を生んでいる。
今年初めの経済活動再開後も中国の景気はなかなか回復せずにいる。中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は6月も49にとどまった。4月から3カ月連続で50未満にとどまっている。PMIは50より高ければ景気拡大、50より低ければ景気収縮を意味する。1~5月の固定資産投資は4%の増加にとどまった。5月の産業生産も3.5%の増加にすぎなかった。同月の輸出は昨年より7.5%減り、輸入は4.5%減少した。景気不振は雇用市場に克明に現れている。5月の16~24歳の青年失業率は20.8%で過去最高を記録した。消費心理が冷え込んでいるのが特に問題だ。米外交専門紙フォーリン・アフェアーズは人民元預金が1-3月期に41%増えたことを指摘する。当局の内需浮揚策にもかかわらず中国人が財布を開いていないということだ。消費者物価上昇率は3月から3カ月連続0%台にとどまった。不動産沈滞も相変わらずだ。金融データ業者ウインドによると5月の中国主要30都市の新規住宅販売はコロナ禍前の2019年より77%減少した。
中国は長く人民元を基軸通貨にするため人民元相場の安定化に力を注いできた。しかし景気が回復しなければ人民元の国際化は先送りされ人民元安カードを積極的に活用する可能性がある。内需振興に向け利上げは考えにくく、輸出促進に向けては人民元安が必要なためだ。
◇韓国、円安・人民元安に包囲
ウォン相場も今年に入り下落傾向だ。先月末のウォン相場は1ドル=1316.30ウォン。 上半期に4.3%下落した。やはり主な理由は韓米間の金利差だ。韓国が1月以降に利上げを止め両国間の金利格差は過去最大の1.75%まで開いている。
ウォン相場が下がったとはいえ円と人民元ほどではない。円と人民元と比較するとウォンが相対的に強いという意味だ。特に対円のウォン裁定為替相場は先月中旬100円=897.49ウォンを記録した。対円ウォン相場が800ウォン台を記録するのは2015年6月から8年ぶりだ。その後900ウォン台序盤で推移している。
この程度の円安は韓国経済に竜巻を起こす。日本を訪れる韓国人観光客が急増しており、日本株への投資が大きく膨らんだ。特に輸出に影響を与える。世界市場で韓国と最も競争関係にある国が日本であるためだ。いくら輸出で為替効果が減ったとしても依然として無視できないのが事実だ。対ドルで円相場が1%下落すれば韓国の輸出金額が0.61ポイント減少するという分析(韓国経済研究院、2022年11月)もある。人民元安も韓国経済を疲弊させる。韓中経済は補完関係から競争関係へ性格が変わった。電気自動車、バッテリー、造船など最終財だけでなく中間財で韓中間の競合品目が増えている。人民元安は中国の価格競争力を高め韓国製品を脅かす。
円安と人民元安は日本と中国の戦略的選択だ。日本はデフレの泥沼から脱出するために円安を楽しんでおり、中国は景気低迷から抜け出すために人民元安を容認している。
これに対し韓国の為替政策はジレンマ状況だ。物価上昇を望む日本や物価が低迷する中国とは境遇が違う。ウォン安は物価を刺激する危険性が大きく、ウォン高は輸出に不利だ。社会の雰囲気も大きく変わった。物価を犠牲にしてでも輸出を増やすことに対する反論は少なくない。輸出競争力のため市場介入も辞さなかった「為替主権論者」の声も特に聞こえない。
延世(ヨンセ)大学経済学部のキム・ジョンシク名誉教授は「米国の利上げ行進で世界経済沈滞の可能性が大きくなり日本と中国が円安と人民元安で対応している状況。今後韓国経済に厳しい状況が生じる恐れがあるだけに警戒心が必要だ」と話した。経済大国中国と日本の攻勢的な自国通貨安が韓国経済を新たな試験台に載せている。
イ・サンリョル/論説委員
中央日報
https://japanese.joins.com/JArticle/306216?servcode=100§code=140