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【韓国】 就活せず「休む」青年が増加 気位高い「現代の両班」というマイナス意識 「年収は日本より上」も…
気位が高く「両班は溺れても犬かきはせず」と朝鮮の諺(ことわざ)は言う。
今日の韓国で、大卒男子は若年層では過半数を占める。
「少数のエリート」とは程遠い存在だが、気位は高い。意識だけは「現代の両班」だ。
だから、その中のある部分は、毎度インスタントラーメンで飢えをしのいでも、
「中小企業ごときには就職しない」と決め込んでいる。
それが、大卒男子の初就職の平均年齢を30歳にまで押し上げている。
国民経済の視点に立てば、これは大きなマイナス要因だ。
両班の仕事と言えば、家で抱えている奴婢に農事を指図することだった。科挙に合格しても、なかなか官職には就けなかった。
王朝の官僚機構が極めて小さかったためだ。
それで、めでたく官職を得たならば、ここぞとばかりに職務に付随する権限をフルに活用して利権を漁った。
同じ派閥の上司に上納して、より利権が多いポストに回してもらうためだ。
そして、派閥の力学構図が変わって、放り出されるときに備えて貯め込むのだ。
今日、大手財閥、公務員、公営事業体、都市銀行に就職できる大卒男子の比率は7%程度とされる。
それらを「今日の両班職場」と見立てれば、派閥争い、直属上司だけへのゴマすり、下請け企業や監督企業との癒着もうなずける。
大手財閥の場合は、50歳前後で大部分が追い出されてしまう。
だから就活組には、法定定年が守られる公務員や公営事業体の方が、中堅財閥より人気がある。
しかし、「現代の両班」意識に固まった若者は、大手財閥に入社し、執行役員に抜擢(ばってき)され、50歳前後で追い出される難関を乗り切り、やがて財閥の大番頭になるか、あるいは在職中に培った力量とコネを生かして華麗に独立することを夢見て、就職浪人を続けるのだ。
飢えをしのぐためアルバイトをすることはあっても、決して生産職として就職する道は選択しない。「両班の仕事」ではないからだ。
親がそこそこ裕福なら、アルバイトもしないで、30歳を過ぎても「カンガルー族」(=親の懐に抱かれている青年)を決め込む。
そうするうちに、就活も放棄する青年が増えてくる。
統計庁の資料によると、資格試験のための勉強をするでもなく、就活をするでもなく、
「ただ休んでいる」だけの人口は、23年4月末時点で、20歳代が38万6000人、30歳代が27万4000人だった(中央日報5月17日)。
彼らが何らかの機会(=ほとんどは親のコネ)に企業に就職したとして、〝できる社員〟に育つだろうか。結婚して子供をもうける余裕ができるだろうか。
韓国の少子化(=22年の合計特殊出生率は0・78で世界最低。
日本は1・26)の原因は「若者の貧しさ」と指摘されるが、さらに突き詰めれば「若者の両班意識」にあるのかもしれない。
つまみ食いした統計数字をもとに、「韓国のサラリーマンの年収は、日本を追い越している」と主張する人々に、韓国の少子化の原因を尋ねてみたくなる。(室谷克実)
夕刊フジ 2023.6/22 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230622-COCXNXMC3ZNARPDQZBWEF7NGM4/