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「バーベキュー生徒死亡事件での学校の法的責任は?弁護士に聞いた」
「バーベキュー生徒死亡事件での学校の法的責任は?弁護士に聞いた」
5月24日、福岡県柳川市の美容専門学校が開いたバーベキューで火災が起き、男子生徒1人が亡くなり、ほか3人の生徒が火傷を負う事故があった。専門学校の学園長は取材に「職員の安全ミスで事故を発生させたことは事実」と認め、「教員だけでなく、学校のミスもあり、責任を感じている」と話した。
6月10日、学校はサイトで「衷心より深くお詫び申し上げます。ご遺族のご心痛は計り知れないものと存じますが、誠心誠意、真心をもって、支援を行っていく所存です」と謝罪した。
事故は5月24日12時51分ごろ、生徒約470名が参加する学校行事の中で起きた。西日本新聞などの報道によれば、学校の教員が火を強めようと火に消毒用アルコールを噴霧したところ、爆発的に燃え上がり、男子生徒らに燃え移ったとみられる。柳川署は業務上過失致死傷の疑いで捜査しているという。
学校は6月9日、福岡県に内部調査の報告書を提出したほか、今後は第三者委員会を設置すると発表した。今後、刑事・民事でどのような法的責任が問われることになるのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
●「5年以下の懲役もしくは禁錮、又は100万円以下の罰金」
東京消防庁のHP によれば、「消毒用アルコールは、蒸発しやすく、可燃性蒸気が発生するため、火源があると引火するおそれがあります」とのことです。また、エタノールの場合、炎が見えにくく、引火しても気がつかないこともあるようです。
消毒用アルコールは、殺菌効果を発揮するためには一定程度のアルコール濃度が推奨される一方、アルコール濃度が60%を超えると消防法上危険物に該当するほどですので、特に火気があるところでの取扱いは細心の注意が必要です。
今回、大変残念ながら、若い生徒が亡くなってしまったとのことですが、仮に報道のとおりであれば、火の中に消毒用アルコールを入れたという教員の行為はあまりに危険で、軽率であったといわざるを得ません。
業務上過失致死傷罪(刑法211条)は、業務上必要な注意を怠ったことにより人を死傷させたときに成立する犯罪です。有罪の場合には、5年以下の懲役若しくは禁錮(改正法の施行後であれば、拘禁刑)又は100万円以下の罰金が科されます。
仮に報道のとおりの事実関係であれば、今回の事故は学校の行事中に、教員が、揮発性の高い消毒用アルコールを火に近づけて引火させたというものであり、この教員の落ち度は明らかですから、同罪が成立することになります。
どの程度の刑になりうるかは、具体的な事情が分からないのでこの段階ではまったく分かりませんが、被害者の数や教員の落ち度の大きさを考えると実刑も想定されるところです。
——民事での責任はどう考えられますか
民事的には、教員個人のみならず、学校法人も被害者やその遺族に対して、損害賠償義務を負うことが考えられます。
事情が分かりませんのであくまで一般論ではありますが、交通事故などで18歳の単身者が亡くなった場合、慰謝料が2000万円から2500万円、死亡逸失利益が約5700万円前後(基礎収入487万円、生活費控除50%、20歳から67歳まで働けることを想定)の賠償額になりえます。なお、本件の賠償額を予想するものではありません。
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。労務など中小企業に関する法律相談、交通事故、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:弁護士法人ASK川崎
事務所URL:https://www.s-dori-law.com/