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AIが作成した女性声優水着画像の問題点|弁護士に聞く
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水着やバニーガールの格好をした、女性声優や女優に極めて似た人物──。そんな写真がTwitterや一部のWebサービスにアップロードされている。しかし、これは架空の画像だ。しかも、そのような架空の画像を自動生成できるAIモデルを販売しているサイトもある。
作成に使われたり販売されているのは、2022年夏ごろから爆発的に話題になった画像生成AI。その中でも、AIモデルに数枚の写真を追加的に学習させることで画像を特定の絵柄に寄せる技術「LoRA」を使っているようだ。
こうした技術で作った画像集を販売しているページもある。「全ての画像はAIが生成した架空のもので、実在の人物や関係者に似ているのは単なる偶然にすぎない」との記載はあるが……。
このような著名人を模したAI画像や、それを生成できるAIモデルなどの売買について、法的にはどのように考えるべきなのか。AI領域の法律に詳しい柿沼太一弁護士に見解を聞いた。
●問題となるのは主として「パブリシティ権」
柿沼弁護士は「今回のケースで主として問題となるのは女優などのパブリシティ権」とし「日本ではパブリシティ権に関する法律上の規定はないが、判例上認められている。最高裁判所は『ある人の氏名、肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利』をパブリシティ権と認め『専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる行為』についてはパブリシティ権侵害に該当するとした」と話す。
最高裁が示した具体的なパブリシティ権の侵害パターンは3つあり、「(1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、(3)肖像等を商品等の広告として使用する」の3類型が挙げられるという。
また、パブリシティ権以外の権利侵害として「女優の顔部分を裸体と組み合わせたような画像の販売はパブリシティ権侵害に加えて名誉毀損等になる可能性が高い」とも指摘している。
●画像の販売についてはパブリシティ権侵害となるが……
画像の販売については、明らかに先ほどの類型(1)に該当するので、パブリシティ権侵害に該当するという。一方、AIモデルの販売については「そのようなモデルの販売行為自体がパブリシティ権侵害に該当するかはフェーズを分けて考える必要がある」と柿沼弁護士。
AIモデルの問題を考える上では「AIモデルを作る」と「AIモデルを販売する(公開・提供する)」の2つのフェーズに分けて検討する必要があるという。その上で柿沼弁護士は「AIモデルを作るフェーズはパブリシティ権の侵害には当たらない可能性が高い」と考えを示す。
これは、AIモデルを作るために画像データを収集し、学習に使うだけでは、上記3類型の行為のいずれにも該当せず「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる行為」には該当しない可能性が高いためとしている。
では「AIモデルを売る」についてはどのように考えるべきか。柿沼弁護士は「AIモデルには学習に利用した画像がそのまま入っているわけではない。つまり『AIモデルを売る』という行為は直接画像を売る行為とは区別する必要がある。“パブリシティ権を侵害する可能性のあるツール(AIモデル)を売ることが違法か”を考えなくてはならない」と指摘。
例えば、AIモデルを販売しても、購入者がパブリシティ権を侵害するような行為をしなかった場合(例:生成画像を手元に置いて楽しむだけのような場合)ならば「購入者はパブリシティ権侵害に問われず、販売主もパブリシティ権侵害にはならないのではないか」と説明する。
一方、購入者が生成画像を販売するなどパブリシティ権を侵害する行為をした場合は、販売主もそのような行為をほう助したと見なされる可能性が高いという。
●「構造としては“Winny事件”に近い」
柿沼弁護士は「構造としては“Winny事件”に近いと思う。ファイル共有ソフト『Winny』を悪用して著作権侵害をしたユーザーだけでなく、当該ソフトの提供者にも著作権侵害についての責任があるのかという問題と似ている」と話す。
「ただし」と柿沼弁護士は続けて「ここまで話したのは、AIモデルの販売行為そのものの問題。通常はAIモデルを販売する場合、そのAIモデルで生成できる女優の氏名や写真を付けて販売している。そのような女優の氏名や写真の利用は当然パブリシティ権侵害や不正競争防止法違反になる」とも指摘。
「女優の氏名や写真を付けずにAIモデルを販売することはおよそ考えられないので、結局のところ適法な販売行為はできないということになりそう。また、生成される画像の中身によっては名誉毀損に該当する可能性もある。いずれにしても、もし私が弁護士として事業者からアドバイスを求められたら、倫理的な問題があり、違法行為につながる行為として、AIモデルの販売は止めるよう強く伝えると思う」(柿沼弁護士)