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新井監督「僕ははだしのゲンになりたいんです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/8c53fa1e3588c3e8197b9e40c52cc9befb64c530?page=1
ここで少し話を変えてみる。ご存知の方も多いと思うが、新井はマンガ「はだしのゲン」の熱狂的なファンである。
筆者である私も新井と同じく広島出身で、小学校の図書館には「はだしのゲン」の単行本が置かれていた。
広島以外の地域でも平和教育の一環として図書館(学級文庫)に置いてあったりするので、実際に読んだことがあるという人も多いだろう。
「はだしのゲン」を読んでまず思うのは原爆と戦争の悲惨さ。原爆によってすべてを失った広島の姿、理不尽な環境や胸が痛むような差別、なにより戦争への怒りが描かれている。
もちろん私もそれを子ども心に感じたし、たくさんのことを学んだ。しかし、新井の解釈は少し違った。
2013年に発行された「『はだしのゲン』創作の真実」(大村克巳著/中央公論新社)には、原作者である故・中沢啓治さんの妻、中沢ミサヨさんの言葉が記されている。
『はい! はだしのゲンです』って答えたんですって。それで先生が『そんなにそのマンガが好きなのか?』って聞かれて『ゲンを読むと元気が出るんです!』って夢中になって読んでいたみたいです。
それで新井選手は今でも苦しい時にはゲンを読んで、元気を取り戻すそうです」
「はだしのゲン」=戦争マンガという印象が強いが、新井は、原爆や戦争の悲惨さも理解しつつ、
それ以上に、そういう環境の中で力強く生きる主人公のゲンの明るさ、元気さに強く惹かれていたのだ。
2011年、闘病中だった中沢啓治さんのところに小学校時代の担任の先生が新井を連れてお見舞いに行ったことがあるのだが、
新井は中沢啓治さんに対し「僕はゲンになりたいんです」と言ったそうだ。その時、小学校のころに読んでいた「はだしのゲン」の単行本を中沢啓治さんに渡すと、
単行本には真っ黒な手あかが付いていた。なんと、そのほとんどが新井の手あかだというのだ。
大のカープファンとしても知られる中沢啓治さんは単行本を撫でながら「マンガ家冥利(みょうり)に尽きるね」と喜んだ。
そこで新井はサイン入りのバットをプレゼントし、新井は「麦のように生きろ」というメッセージが書かれた色紙をもらい、自宅に大切に飾っているという。