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【国際】プーチンは「仲間割れ」を楽しんでいる…ロシア軍と傭兵部隊が”殺し合い”をはじめた本当の理由
■ロシア軍と傭兵部隊が味方同士で殺し合う
ロシア傭兵集団「ワグネル」を率いるエフゲニー・プリゴジン代表が、ウクライナ当局に対し、ロシア正規軍の配備位置を教えると持ちかけていた。米ワシントン・ポスト紙が5月、流出した米国防総省の機密文書をもとに報じた。
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ワシントン・ポスト紙はまた、流出した別の機密文書をもとに、プリゴジン氏がウクライナ軍に対してロシア軍への攻撃をけしかけたとも伝えている。ロシア軍が弾薬の補給に手間取っている事実をウクライナ側に明かしたうえ、ロシア兵らの士気が低いうちにクリミア国境付近での攻撃を加速するようウクライナ軍に助言したという。
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■米シンクタンク「内部分裂の黒幕はプーチン」
このような足の引っ張り合いは、そもそもプーチン氏が招いた事態だとの指摘がある。インサイダーは「プーチンは、派閥同士が争うよう仕向けることがある」と指摘する。
米シンクタンクの戦争研究所でロシア軍を研究するカテリーナ・ステパネンコ氏は、同記事の中で、「プーチンは、一度に1つの派閥にしか関心を向けないという、極めて有害な環境を設けている」と述べている。「チームを入れ替えることで、2つの派閥を互いに競争させる」のだという。
ワグネルとロシア軍に関しても「間違いなくこの2つの派閥を互いに対立させている」とステパネンコ氏は指摘する。氏は、バフムートで国防省がワグネルへの弾薬供給を停止したのも、プーチン氏の指示であったとの見方を示した。プーチンが「間違いなく、2人を操る黒幕である」のだという。
ロイターはバフムートの戦いについて、ロシアがドンバス地方の他都市に侵攻する足がかりになると考える要衝であり、数カ月におよぶ激しい戦いの末に両軍計数千人の命が奪われたと報じている。このような重要な戦闘にもかかわらずプーチン氏は、ワグネルとロシア軍が共闘して要衝をいち早く攻略することよりも、配下の派閥のバランス取りに心血を注いでいるようだ。
■プーチンが「連敗続きのロシア軍」に肩入れする事情
米シンクタンクが「黒幕」と指摘するプーチン氏の下で、本来目的を共有しているはずの2つの派閥が互いに争い合い、ことによっては互いの陣営に銃口を向け合っている。ロシア軍内部の連携の悪さはずいぶんと以前から指摘されてきたが、軍とワグネルの傭兵部隊とのあいだでも泥沼の妨害工作が起きているようだ。
敗退続きのロシア軍に非難が集中するなか、プーチン氏は同軍の大部分を統括するショイグ氏に肩入れするという不思議な動きをしている。そのねらいは、実力をもとに増長するプリゴジン氏の勢いを抑制することにあるのかもしれない。
しかし、そもそも友軍同士を戦わせる構図は、戦場でロシア全体にとって不利を生んでいる。加えてショイグ氏の重用により、ロシア軍を強力に補佐するはずだったワグネルのトップを怒らせる展開を招いた。
こうして不満を抱えたプリゴジン氏は、侵攻中止論をぶち上げ、ロシアトップへの不満を公然と口にする傍若無人な振る舞いを重ねている。あまつさえ、ロシア兵の居場所を明かし、自らの傭兵部隊が助かろうとする始末だ。
■対立を煽り、権力を守りたいプーチンの狙いが透けて見える
ところがプーチン氏としては、やりたい放題のプリゴジン氏を冷遇できないジレンマがある。プリゴジン氏は、ロシア国内に根強く残る国家主義者からの信望が厚い。プーチン氏はかねて、ウクライナ侵攻の口実として国家としての正義を謳ってきた。プリゴジン氏をお払い箱にすれば、こうした熱烈な国家主義者らの反感がプーチン氏に向かうが、これは避けたい事態だ。
また、前回の動員令で国民から不信を買ったことからも、否が応でもワグネルへの依存は当面続くとみられる。
意図的に2つの勢力を対立させることで権力を誇示するプーチン氏だが、現実的にはワグネルの戦闘能力にしがみつかざるを得ない。プリゴジン氏がロシア軍の配備位置を漏らそうとも、軍部を公然と批判しようとも、その暴走を止められない――。そんな苦しい立場に置かれているようだ。
5/31(水) 18:17配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0b478f8c8c01aa8aef232761ede833bf9f38431