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カニのオスに寄生してメス化させる恐怖の寄生動物「フクロムシ」の生態 | ニコニコニュース
image credit: Auguste Le Roux / WIKI commons
上の画像のオレンジ色の円で囲まれている部分はカニ本体ではなく寄生動物「フクロムシ」の生殖器官である。
カニなどの甲殻類をターゲットにするフジツボの仲間、「フクロムシ(Sacculina carcini)」は、取りつかれたら最後、とんでもないハッキングスキルでカニを乗っ取ってしまう。
カニの下腹部あたりに取り付くと「寄生去勢」という技を発動し、オスの場合は強制的にメスにされてしまうのだ。
フクロムシは、甲殻類の「根頭上目」というグループに分類されている。そう、甲殻類に寄生する甲殻類なのである。
フジツボやカメノテの親戚なのだが、目に見える部分はそこまで硬そうではない。
生まれたばかりのフクロムシは、甲殻類らしくエビやカニの幼生ような姿(「ノープリウス幼生」)をしているが、脱皮を繰り返しながらちょっとノミを思わせる「キプリス幼生」になる。カニに寄生して、大変身するのはこの段階だ。
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ターゲットに近づくとぶすりと針を刺し、そこから自分の細胞を注入しては、それまでの殻を捨て去る。
まんまとカニの体内に侵入すると、そこに植物の根っこのようなものを張り巡らし、宿主の栄養を吸収。
そうやって相手の栄養ですくすく成長すると、やがてカニのお腹の辺りに生殖器官である袋を露出させる。これが寄生されたカニのお腹に見えるものだ。
Sacculina carcini in a crab from southwest Ireland
オスの場合、強制的に性転換させられてしまう
この袋はほとんどが卵巣でできているのだが、それをお腹に露出させるのには理由がある。
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寄生されたカニは、その袋を自分の卵と勘違いして、掃除をしたり、生まれた子供の放出を助けたりと、せっせとお世話するようになるのだ。
ところでお腹の卵をお世話するカニはメスだ。ならば、もしフクロムシが寄生した相手がオスだったらどうなるのだろうか?
ここで件の強制性転換スキルが発動される。フクロムシはオスの性腺を破壊して、無理やりメスにしてしまう。これを「寄生去勢」という。
そうしてメス化したオスはただ子供が作れなくなるだけでなく、お腹が広くなるなど見た目もメスっぽくなる。そして元オスもまた、フクロムシの袋をかいがいしくお世話をするようになる。
このように宿主に子作りできなくさせるのは、宿主のエネルギーが繁殖に費やされることを防ぐためだと考えられている。
そうすることでフクロムシは、より多くのエネルギーを相手から頂戴できるようになるのだ。
Sacculina carcini on Shore crab
一方フクロムシのオスは?
ちなみにこの強制性転換スキルは、フクロムシのメスだけの技術だ。ではオスはどうかというと、ただの精細胞のような姿で、メスよりもずっと小さい。
メスの袋の中にはオスが入り込める部屋があり、その中でオスはひたすら精子を出して、子作りに励む。
無理やり性転換されるカニのオスも切ないが、フクロムシのオスの一生も案外切ないものかもしれない。
追記:(2023/04/22)本文を一部訂正して再送します。
References:The Crab Hacker Barnacle Moves Into Crustaceans And Changes Their Sex | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo