https://bunshun.jp/articles/-/61327
長崎県の離島、壱岐島に住む高校2年生が3月1日に失踪し、2週間がたった15日現在も行方不明となっており、警察などが行方を捜索していることが「 週刊文春 」の取材でわかった。この高校生は壱岐市の離島留学制度で来島しており、“里親”宅でホームステイしていたが、「死にたい」などと洩らしており、安否が心配されている。
失踪したのは椎名隼都君(17)。椎名君は茨城県出身で、中学2年生の時に来島。“里親”であるAさん宅で生活しながら地元の長崎県立壱岐高校に通っていた。
椎名君が失踪したのは、大雨が降っていた3月1日の16時30分ごろのこと。地元住民が語る。
「その日は壱岐高校の卒業式があり、離島留学していた高校3年生たちが最終便のフェリーで本土に帰る。椎名君も彼らを見送るため、フェリーが停泊する郷ノ浦港にAさんたちと向かっていたのですが、『傘とマスクを忘れた』と一人で帰宅。再び家を出た後、行方をくらませてしまったのです」
椎名君のスマホはAさん宅に置いたままで、所持金は1000円ほど。痩せ型で身長約175センチ、白と紺のボーダーニットに紺のジャージズボンという軽装だったという。
同日20時ごろ、Aさんが学校に連絡。約1時間後から警察による捜索が開始された。
「当初は島の南西部にあるAさん宅周辺を中心に捜索していたが、椎名君が山に入った可能性を考慮に入れ、4日から5日にかけて大規模に山間部を捜索。警察犬を入れるなどして島の北側まで捜索の手を広げるも、失踪直後に自宅近くで目撃されたのを最後に足取りは掴めていない。警察は『島民は皆知っている』と公開捜査はしない一方、海上保安庁に要請するなどして沿岸部にも捜索の手を広げています」(捜索に参加した島民)
■「Aさん夫妻から叩かれていた」
椎名君が利用している離島留学制度は、地域の活性化や教育振興を目的に、2018年から壱岐市が小中学生を対象に実施。
「もともと長崎県が2003年から推進していた『高校生の離島留学制度』に続く形で行われている取り組みです。自然豊かな島で学びたいと全国から多数の応募があり、昨年時点で島内に小中学生が41名、高校生が36名留学している」(学校関係者)
椎名君は里親であるAさんに月8万円(自己負担は4万円)を支払い、Aさんの家族4人と、小学生~高校生の他の留学生6人と一緒に暮らしていたという。
「中学生の頃からソフトテニス部に入っていました。おとなしくて、一人でいることを好むタイプですね。高校に上がってから島内のテニス大会で見かけた時は、ニコニコと笑顔を見せていたのですが……」(中学同級生の親)
椎名君はなぜ、姿を消してしまったのか。椎名君の知人が打ち明ける。
「実は、椎名君は普段からAさん夫妻から叩かれたり、大声で罵倒されたりしており、失踪当日も叱責されたようなのです。同居する他の留学生たちも同じようにされていたと聞いています」
■Aさんを直撃すると…
3月13日、Aさんに話を聞いた。
――椎名君に手をあげたり、大声で叱ったりしていました?
「胸倉を掴んだり、叩いたりしたことは一度だけありますけど、それ以外はやっていません。根性論的なところはやっぱりあったので」
――今回の失踪は、Aさんにも原因の一端があると言われていますが。
「それはありますね。たらればの話ですけど、あの時こういうふうに接しておけばよかったと思うことばかりで、自信喪失しました」
3月15日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」及び3月16日(木)発売の「週刊文春」では、Aさん夫妻の留学生に対する普段の振る舞いや、失踪当日に椎名君が受けた叱責の内容、Aさんとの詳しい一問一答、椎名君の父親のコメント、椎名君が残していた“メモ”の中身などについて報じる。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月23日号