国会で不思議な現象が起きている。国際政治学者・三浦瑠麗氏の夫である三浦清志容疑者が4億2000万円を横領した疑いで東京地検特捜部に逮捕されたにもかかわらず、立憲民主党など野党は、三浦容疑者が手掛けた太陽光発電問題を参院予算委員会で積極的に取り上げようとはしないのである。代わりに立憲民主党は、安倍晋三政権時代の放送法をめぐる総務省の文書問題に注力している。自民党国対関係者が首をひねる。
「地検による逮捕が3月7日。参院予算審議の最中で、4月には統一地方選と衆参5補欠選挙が予定されている。野党にとって政権を追及するのに、これほど格好のタイミングはないはず」
瑠麗氏は政府の「成長戦略会議」などの有識者委員として名を連ね、小泉進次郎元環境相ら自民党議員とも交流がある。テレビ番組にも多数出演しており、野党にとってこんなオイシイ話はないはずなのに、である。
地検が乗り出してきたからには、清志容疑者だけで止めるとは考えづらい。当然のことながら業務上横領事件だけでなく、清志容疑者との関係が取り沙汰されている「大物政商」の摘発を視野に入れている、とみるのが当然だろう。
この「大物政商」は岸田文雄首相の側近である木原誠二官房副長官を、かつて落選時代に資金面で面倒を見ていた人物として知られる。
もっとも、立憲民主党にも追及できない理由があった。この「大物政商」の世話になっている立憲の議員が少なくないからだ。しかも太陽光事業は菅直人元首相をはじめ、同党も推進しようとしている。
そもそも清志容疑者が経営する再エネファンドが成立するのも、立憲民主党の前身である民主党政権が作った再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が、巨額の利益を業者に保証する制度であるからだ。
民放テレビ局も、瑠麗氏がコメンテーターとして出演していたため、この問題を取り上げづらい。民放局も立憲民主党も「三浦瑠麗隠し」に加担しているのだ。だから、岸田政権とはなんら関係ない総務省文書にこだわる…そんなおかしな構図になっている、というのが真相である。